第214話 獣人の村の話(3)
ドグマニス帝国。
なんか『帝国』っていう響きからして、ヤバそうな気がするのは、思い込みだけではないと思う。
念のため、帝国のある場所を聞いてみると、ガズゥたちの村のある国(ビヨルンテ獣王国)の隣にあるらしい。
そして、帝国から見て、ガズゥたちの国を挟んだ反対側にあるのが、キャサリンたちの国で、コンドゥリア王国。ガズゥたちの村は、こちらとの国境近くにあるそうだ。
ちなみに、私たちの住んでいる山周辺は、この3国の南に位置するらしく、空白地帯になっていて、どこの国にも属していないところだそう。
一般的には『聖なる山』と言われていて禁足地扱いになっているらしい。
うん、なんとなく、そうかな、とは思った。
ビヨルンテ獣王国は、獣人主体の王国なのだそうだ。
キャサリンたちの国とドグマニス帝国は人が主体となる国で、獣人は下に見られることが多いのだそうだ。それは、この前の御者の目つきから予想はつく。
ただ、ドグマニス帝国の方が質が悪いらしい。
「あいつらは、巧妙な手口で獣人を攫っては、奴隷にするんだ」
特に、まだ小さな獣人の子供が狙われやすいのだとか。
今回の魔物の襲撃にしても怪しいと、コントルさんが言う。魔物にも増える時期というのがあり、今回はその時期ではなかったのだそうだ。そもそも、村の中にまで魔物が入り込むことが異常事態で、普段ならありえなかった。
「もし、あの小刀がなかったら、コンドゥリア王国に探索の者を多く行かせていただろう。そうしたら、もっと早くにガズゥたちを見つけられたかもしれない」
うん?
それって、もしかしたら小刀自体が偽造された証拠って可能性もあるんじゃない?
そもそも、ガズゥたちが捕らえられていた場所って、この山の近くなわけだし、コンドゥリア王国の人間が人攫いだったんじゃ?
「ガズゥたちを攫った人間については知らんが、この前『排除』してきた連中は、その、なんとか帝国の奴らだったと思うぞ」
突然のエイデンの言葉に、ギョッとした私。
「何を根拠に」
「うん? 奴らの纏う気が、この辺のモノとは違ったのだ」
「……そんなのわかるの?」
「ああ……奴らには、俺の大嫌いな奴らと同じ気があったからな」
エイデンが嫌いな者と言ったら。
「もしかして聖女関連?」
「ふんっ。俺が滅ぼしたあの国の連中のモノと同じだ」
どうも土地土地で、その気なるものが違うらしい。中でも、その亡国の土地は、滅ぼされた後は、エイデン曰く、腐臭が酷かったらしい。
「彼の土地は、ここからずっと東にある。恐らく、それが今の帝国の土地と重なっているんであろうよ。違うか?」
コントルさんたちが、固まっている。
「あの、コントルさん?」
「え、あ、はい、あの、こちらの方は……」
「あ、ああ、彼は古龍のエイデンよ」
「コ、コリュウ……」
「古龍?」
「まさか、ご冗談を」
ニヤリと笑ったエイデンの瞳が、爬虫類のそれに変わった。
「ここで古龍の姿に戻ってもいいが、お前らに耐えられるか?」
「やめてっ!」
エイデンのそれは冗談にならないからね!





