第213話 獣人の村の話(2)
コントルさんたちが迷わずに駆けていく後姿に、唖然とする私。
「……どこに行くの」
「近場の水場にでも行ったんだろう」
エイデンは当然のように言うけど、彼ら、ここに来たばっかりじゃなかった?
「え、ここで近場って、いっても山の向こう側だし、そんなの知らないんじゃ」
「あいつらの嗅覚は敏感だから、わかってるんだろう。それに、距離にしたって、ちょっとそこまでなんだろう」
エイデンの言葉に、獣人の感覚にびっくりする。
「五月様、叔父さんたちなら大丈夫です!」
ガズゥが自慢気に言うには、ガズゥの父親が村に来るまでは、コントルが村一番の狩人だったのだそうだ。
本来であれば、ガズゥの母親は隣村に嫁入りして、長男だった弟のコントルが新しい村長になるはずのところ、婿入りしたガズゥの父親が村長になったのだとか。
……なんか、ガズゥのお母さん、凄そう。
ちなみに、魔物の討伐にはお母さんも出ていたそうだ。なんと、女性では村で一番の狩人なのだとか。
なんか、『自分より強い男じゃなきゃ結婚しない』っていうタイプなのかも……と思ったら、本当にそういう女性だったらしい。寝物語に、二人の馴れ初めを聞かされていたそうだ。うん、よっぽど、ガズゥのお父さんが好きなんだね……。
とりあえず、ドンドンさんから両親が無事なのを聞いて安心したらしい。テオとマルの両親は、それぞれに怪我をしたものの、軽傷だそうだ。
それにしても、魔物が大量発生して村を襲ってくるっていうのは、普通にあることなのだろうか。この辺は、ビャクヤやエイデンたちがいてくれるおかげなのか、生きている魔物と遭遇することはない。
ガズゥたちの村でも、うちみたいな結界のようなものが張れていれば、村まで入り込まれることはなかったのではないか。いや、でも、これは、私だから結界が機能しているだけのようだし……なんとかならないか、なんてことを悶々と考えていると。
「お待たせしました!」
「……魔石はどうしますか」
コントルさんが見事な鳥肉を抱えて戻ってきた。かなり大きい。ドンドンさんが、これまた掌の大きさの薄い緑色の魔石を差し出した。
これは風の魔石だそうで、今のところ、うちでは魔道コンロしか魔石の使い道はないので、あっても意味がない。でも、売ればそこそこの値段になるとのことなので、受け取るだけ受け取った。『収納』で『売却』もできるし、わざわざ街まで行かなくてもいいしね。
食事のペースが落ち着いたのか、ガズゥたちはコントルさんたちに今までのことを話していた。
「……そうか。人族があんなところにまで入り込んでいたのか」
憎々し気に言うネーレ。犬歯が見える気がするんだけど……怒ると生えてくるの?
「落ち着け、ネーレ」
冷静な声でコントルさんが言っているけど、ジワリと怒ってる気配を感じる。
「あの……おじいさんは、やっぱり……」
「……ああ。ただ、じいさんはタダではやられてなかったぞ」
おじいさんの遺体の周囲には、人族の血も大量に残っていた上に、証拠となる物も残されていたのだとか。
「証拠?」
「ああ。ドグマニス帝国の紋章入りの小刀がね」
ガズゥたちの空気が一気に重くなる。
……とりあえず、その、なんとか帝国ってのは、嫌われ者な国なんだなってことは、異世界情報の少ない私でもわかった。





