第211話 獣人の村の話(1)
東屋では肉の焼けるいい匂いが漂っている。
ガズゥたちがせっせと焼きあがった肉や野菜を皿に盛りつけては、迎えにきてくれた叔父さんたちへと渡している。その姿の、なんともほほえましいこと。
今回迎えに来たのは、ガズゥの母親の弟のコントルさんと、前回、ガズゥたちに迎えに来る約束をしたドンドンさん、そしてテオとマルの従姉のネーレさんだった。コントルさんとドンドンさんは私とそうたいして年はかわらない気がするが、ネーレさんはまだ十代後半くらいだろうか。全員が黒っぽい系統の中で、ガズゥの銀髪はかなり目立つ。
「こいつは旨いな」
「こんな味は初めてだわ」
「んまい、んまいっ!」
3人ともが美味しそうに食べてくれるので、私も嬉しくなる。ちゃんと野菜も食べるんだよ、と子供らが勧めている様子に思わず笑ってしまう。
食事をしながら、詳しく話を聞くと、元々ガズゥの父親のネドリは獣人の国の冒険者だったそうで、たまたま討伐依頼で訪れた村が、ガズゥの母親の村だったのだとか。
「我が姉ながら、あの猛アタックにはネドリ様が不憫になるくらいだった」
コントルさんが遠い目になっている。かなりの肉食系女子だったんだろうか。
「しかし、おかげでフェンリル様のお血筋のガズゥ様が生まれてきたのだ。ありがたいことではないですか」
肉を頬張りながら、ドンドンさんが嬉しそうに言っている。
私はあんまり気にしてなかったけれど、こっちでは、そういうのって重要なのだろうか。実際、ガズゥは見た目はだいぶ違うけど、能力的にどうなのかっていうのは、見たことないしなぁ。
「五月,旨そうな匂いだな」
いきなり、エイデンがノワールを連れてやってきた。今日もどこかで狩りでも行ってきたのだろうか。その割には獲物はないようだけれど。
「食べる?」
「いただこう」
「俺も食べたいっ!」
嬉しそうにこたえる一人と1匹に、苦笑いを浮かべながら、皿に肉を盛ろうとして気が付いた。コントルさんたちが固まってしまった。
……あー、ノワールか!
自分たちには、すでに普通になっていたとしても、お初の彼らが驚いても仕方がない。もうすでに可愛い感じじゃなくなってるしね。
ちなみに、ガズゥたちも一緒に狩りに行ってるので、すでに慣れている。
『五月~』
今度はハクの声が遠くから聞こえてきた。
どこにいるのかと思えば、荒野の方からたくさんのホワイトウルフたちを引きつれて、駆けてくる姿が目に見えた。
そっちには行かないようにって、シロタエに伝えるように言ったんだけど!
全然、言うこと聞かないよね。
その上、何か大きいのを咥えて走ってる。あれは……鳥か? ダチョウ?
「ヒィィィッ!」
あ、ネーレさんが叫び声を上げて、しゃがみこんでしまった。
「あ、あれは、フェンリル様っ!?」
コントルさんは叫ぶと同時に、食べ物そっちのけで、五体投地で地面に頭をすりつけている。
……うん、ハク、ホワイトウルフにしては、でかいもんね。
肝心のフェンリルの姿は知らないけど、ハクにもその血が流れてるのは把握してる。
でも、これほどまで? と、ちょっと唖然とした私なのであった。





