第208話 初魔道コンロ、着火!
無事に山に戻ってきて最初にやったのは、魔道コンロを使ってみたこと。
時間も時間だったので、夕飯の準備も兼ねて、大きな東屋の方で試してみることにした。
埃塗れのガズゥたちをお風呂にいかせている間に、ガスコンロを出してみる。
「とりあえず、2台並べて……魔石を入れるのはここかな」
見た目は、ほぼ私の持っているガスコンロと同じ。ガスボンベを入れるところがない分、コンパクト。うっすらと赤い魔石は2台買ったのでおまけでくれた。これ、使い切ったら、新しい魔石を手に入れなくちゃならないのだろうか。
掌に転がる2つの小さな魔石を見ていると、火の精霊が集まってきた。小さくてチラチラと燃えるような感じの彼ら。料理をしていると手伝いたがったことが何度かあった。一回、任せたら、お肉が消し炭になったので、それ以来、遠慮気味だったけれど。
『さつきさま~、これにまりょくいれてもいい?』
「へ?」
『これ、まだいれられる~』
「え、あ、うん」
掌の魔石の周りに集まりだした火の精霊。彼ら自体は熱くもない。
しかし、使い切りかと思った魔石が、充電じゃなくて充魔力な物だったとは!
最初はうっすらと透明感のある赤い魔石だったのが、どんどん濃くなっていって、最終的にサンゴのような赤さにまでなった。
『これでいっぱーい!』
『いっぱーい!』
火の精霊たちは、すごくご機嫌なんだけど……。
「……これ、使っても大丈夫なのかな」
『大丈夫じゃない? 私もいるのだから』
シロタエが脇から覗き込んでくる。
「いきなり爆発とかしないわよね」
『心配いらないわよ(何かあったとしても、エイデン様が五月様に防御魔法かけてるしね)』
とりあえず1個だけ、電池を入れるような口のところに嵌めてみる。同じ色の3つのボタンが並んでいて、文字が書いてあるんだけど、読めない。普通なら消すボタンと、火力の違うボタンかな、と想像がつく。
なんとなく真ん中のボタンが着火じゃないだろうか。
「よし、ぽちっとな」
ポッ
「おおおっ!」
着いた! うん、これは弱火というよりも中火かな。右隣を押してみる。
「おおお~」
今度は弱火になった。もしかして、このコンロって火力が弱いのだろうか。強火が使えないのは痛いな。とりあえず、反対の端っこのボタンを押して、消そうとしたら。
「おおっ!? なぜに強火っ!」
まさかの消すボタンがない!?
慌ててコンロを確認してみると、側面に黒いボタンがある。これかっ! と思って押したら、消えてくれた。
「……なんで、こんなところにボタン置くのよ!?」
そう叫んだ私は悪くないと思う。普通、並べるよね!?
とりあえず、真っ赤になった魔石も問題なく使えそうだし、このまま料理を始めてしまおう。
「あー、そういえば、あの街で食べ物とか見てきたかったなぁ」
タレに漬け込んでおいたお肉のジッパー付きのビニール袋を取り出しながら、小さく呟く私なのであった。





