第206話 従魔登録
魔道コンロを受け取ると、私たちはスノーを従魔登録するために、冒険者ギルドへ向かうことにした。
中に入ったとたん、大柄なスノーの姿を見た冒険者たちが武器を構えようとするから参った。さっきの魔道具屋の老人といい、この反応からすると、建物の中にいた人とかはエイデンの魔法は効かないってことなのかもしれない。
結局、エイデンのひとにらみで、皆、下がっちゃったけど。
ちょうど空いていた受付カウンターに並んで座る私たち。スノーは大人しく私たちの背後でお座りしている。
「え、冒険者登録しないとダメなんですか?」
従魔として登録するのは冒険者のみなのだとか。普通の人、例えば商人とかで登録するような人がいないのか聞いてみたら、そんな物騒なことをする商人などいない、と笑われてしまった。
「ペットとかにする人とかいないんですか?」
「ぺっとですか?」
「ええ。普通に可愛がるとか」
「魔物を可愛がる?」
受け付けてくれた女性が訝しそうな顔をする。うん、これも異世界の常識的なヤツか。ここでは魔物は魔物でしかないってことだ。
でも、自分が『冒険者』とかっていう柄でもないしなぁ、と思って隣を見る。
「じゃあ、エイデンが登録してもらえない?」
「俺がか?」
「うん。スノーたちを従えてるように見えるのって、私なんかよりもエイデンじゃない?」
「……五月が望むなら」
「スノーもそれでいいかな」
『エイデン様がお嫌でなければ構いません』
大きな尻尾がぶんぶん振られている。よっぽど嬉しいのかしら。ちょっと悔しい。
結局、エイデンが冒険者登録をして無事にスノーの従魔登録完了。エイデンが冒険者登録してなかったことに、受付の女性に驚かれた。そこそこの年齢な上に冒険者っぽい格好してるのに、未登録って思ったら、驚くか。
街中を歩くときは必ずこれを付けるようにと、小さい金属の板を渡された。あっちでいう飼い犬の鑑札みたいなものだろうか。首輪みたいなのを買って下げるしかないのだろう。
ついでに、なんで門がしまっていたのかを聞いた。
「ああ、なんでも最近《《ホワイトウルフの群れ》》が頻繁に現れるようになって、隣国へ抜ける街道が通行止めになってるっていうのは知ってるわよね」
……いいえ。知りません。
「その群れが、なんか大きな魔物と一緒に、街に向かっているっていう報告があって、門を閉じてたのよ」
うん? 《《大きな魔物》》?
まさかと思うけど、軽トラのこと言ってたりしないよね。
ていうか、どこでそんなの見てたんだろう?
「門の方に警備のための兵士が集められてたけど、どうなったのかしらね」
うん、みんなゾンビ状態になってたね(遠い目)。
エイデンの魔法、魔道具の店を出たときにかけなおしてたけど、そろそろ切れてるのかしら。
「まぁ、Aランクの『血気団』が討伐に向かってたから、そのうち落ち着くと思うけど」
……なんですと!?
思わず勢いよく立ち上がってしまった。
「エイデン」
「あいつらなら大丈夫だろうが……五月のためにも、戻るか」
「ありがと」
エイデンの感じから、心配はしていないようだけれど……そのAランクっていうのがどれくらい強い人達なのかわからないし。不安でドキドキしてくる。
私たちは、足早に冒険者ギルドを後にした。





