第204話 魔道コンロ、ゲット!
エイデンの後を追いかけ、街の中を進む。海外旅行なんてハワイとか台湾くらいしか行ったことがなかったので、こういう見るからにヨーロッパ風な石造りの街の中っていうのは、なかなか興味深い。さすがにカラフルな色使いはないし、自動車なんかも見られないけど。
通りを歩く人達は予想通り、彫りが深い顔族で、着ているものも正直あまりいいものという感じはしない……うん、まだゾンビだな。そのおかげなのか、スノーがいても誰も騒ぎ立てない。
「ここかな……五月!」
石造りの建物のドアを開けると、私を手招きする。スノーは店の前でお座りしている。偉いぞ。
「えーと、お邪魔します~」
薄暗い店の中に入ると、なんか色んなものがごちゃっと置かれている。
「……おや、お客さんかい」
棚に並んだ商品を見ていると、店の奥から小柄な老人が出てきた。この人は、ゾンビじゃないみたい。何が違うのかわからないけれど、今はお買い物の方が優先。
「あ、あの魔道コンロってありますか?」
「あるよ。大きさは3種類あるけど、どれにするね」
「商品、見せてもらえます?」
私は老人が店の奥から持ってきてくれた魔道コンロを見比べる。1つ目はマグカップサイズ。主に冒険者が持ち歩くのがこれらしい。2つ目は、私が持っているガスコンロサイズで、最後のは2口コンロ。
「使う魔石のサイズは、最初の2つは同じ。これで十分さ。最後のは、これの倍の大きさのものになるな」
老人が見本で見せてくれた魔石は、少しくすんだ赤の親指の爪サイズ。火だから赤い魔石ってことなのかもしれない。ガズゥやホワイトウルフたちが獲ってきていた魔物にも、小さな石があったけど、それはもっと小さい気がする。かといって、エイデンやビャクヤたちの獲ってきたのだとサイズが大きすぎるしなぁ。
「あの、魔石ってここでも売ってます?」
「いや、うちは魔道具専門なんでな。この程度の魔石だったら、ギルドにでも行けば売店にでも売ってるだろうが……もしかして、いいとこのお嬢ちゃんか?」
老人の目つきが変わった。
魔石のことって、それが常識なのか。失敗、失敗。
「あ、あはは。普段は家の者に任せてるもので……」
「なるほど……だから、あんな立派な護衛がご一緒なのですな」
うんうん、と頷きながら、老人は色々と魔道具について説明しだしてくれた。どうも、初めての遠出にでもいくお金持ちの子とでも思われたのか。なんか上等そうなキャンプグッズみたいなのをすすめ始めた。
……いや、欲しいのは魔道コンロだけなんだけど。
「おい。五月が欲しいのは魔道コンロだけだ。余計なものはいらん」
エイデンが声をかけてくれなければ、延々と話し続けられてたかもしれない。
結局、ガスコンロサイズのを2つ買った。2口のと迷ったのだけれど、ガスコンロサイズを2つ買った方が安かったのだ(ガスコンロサイズ4万G✕2、2口コンロ10万G)。といっても、予想よりも高かったけど、ビャクヤたちが獲ってきてくれていた魔物の『売却』のおかげでお金が貯まってて助かった。
老人が在庫を見に行っている間に、棚に並ぶランタンの魔道具に目を向けた。
「エイデン、これいくら?」
「うん? 1万Gと書いてあるな」
「えっ」
いや、こんなんだったらホームセンターで売ってたLEDライトの方が安いしっ!
値段に衝撃を受けていたところに、突然、店の外が騒がしくなった。





