第201話 異世界の荒野で、軽トラ運転中!
見渡す限りの荒野。少し遠くに木の影が見える。振りかえれば、うちの山はもう小さくなっていて、土煙をあげながら道なき道を走るのはうちの軽トラ。
私は今、軽トラのハンドルを握り、この世界で初めて、人が住んでいると思われる街へと向かっている。
新しくダウンロードした『地図アプリ』を使うために!
本当は『収納』のバージョンアップにも心が惹かれた。だっていくらでも入って、時間も止まってるなんて、買いだめした時に便利じゃない。それに、たまにビャクヤたちが狩ってくる魔物なんかも、すぐに何もできない時とかも、保存ができるわけでしょ。
でもね、現状でも特別不便ってわけでもない。そう、緊急性がないのよ。そりゃ、いつかは、って思いはあるけれど。
それは『翻訳アプリ』もそう。会話はイヤーカフでなんとかなっているし、単純に山で生活するだけだったら、文字に触れる機会って、そんなにないんじゃないかなと。それに、ちょっと、ズルいかもしれないけど、エイデン頼みなところもあったりする。
「五月、これは何で動いてるのだ?」
ということで連れてきています。ワクワクした顔で隣に座っているのはエイデン。ちゃんとシートベルトはつけている。しかし、身を乗り出して私の視界を遮るなっ!
彼の手には、私のタブレット。しっかり『地図アプリ』たちあげてます。最寄りの街まで、あと半分くらいだろうか。
さすがにグー〇ルマップのように詳細ではない。大きな街道と街が記されているだけ。もしかしたら、これもバージョンアップするとかあるのだろうか。
「ちょっと、落ち着いてくれる? 邪魔されると、ハンドル、ミスっちゃうからっ!」
私の本気の怒りに、エイデンは肩をすくめて、外へと目を向ける。
軽トラに並走するのは、ガズゥたち。そう、並走している。どんなスピードよ!
……いや、ホワイトウルフたちと一緒に走ってた時点で、相当な早さだと気付くべきだったのかもしれない。ちなみに、今の速度は40キロ。安全運転してます。この世界で法定速度なんてないかもだけど、こんな荒れた地面でこれ以上スピード出す勇気はない。
ちなみに、ホワイトウルフたちも一緒に走ってる。今日はユキとスノーも一緒だ。
ドンッ
「え、何!?」
いきなり何かがぶつかるような音がして、慌てて見回す。
「さつきさまぁ! すごいね!」
マルが運転席の脇の窓から顔をのぞかせてきた。
「うわっ!? やだ、マル、危ないってば!」
私は驚いて慌ててブレーキをふんでしまった。
「うぉーっ!?」
ヤバいッ!
急に止まったものだから、マルの身体が前へと飛んでいく……けれど、スタッと体操選手のように着地した。その姿に、一気に脱力。大きなため息が出る。
「さつきさま、あぶないよぉ」
「それは、こっちのセリフよっ! いきなり車に乗らないっ! 運転中に驚かさないでっ!」
運転席から身を乗り出して、マルをしかりつける。
「うんてんちゅう?」
「そう!」
そんな私をよそに、今度はガズゥたちが軽トラの荷台に乗ってる! あ、ホワイトウルフたちまで!?
この状態で街とかに乗り込むのって、ヤバすぎる気がしてきた私なのであった。





