表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
山を買うまでの半年のできごと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/969

 <創造神 イグノス>

 元聖女が、創造神イグノスの世界に戻ってくる。

 目の前で、この地にテントをはりだした五月のことを見ながら、彼の神は期待に震えていた。


 イグノスの世界では、人族によって、多くの聖獣や精霊が絶滅の危機に瀕していた。何度も神託を下ろしても、神殿の言葉に各国の王族たちが耳を貸そうともしないせいだ。


『彼女の力の及ぶ範囲が広がれば広がるほど、聖獣や精霊たちが守られる場所が増えるはず』

『彼女に、元聖女という話はしないのですか』

『ああ。彼女は知る必要はない。ただ、あの山で楽しく幸せに暮らしてくれればいいさ』

『……彼女は、前世でよほど酷い目にあったのでしょうか』


 稲荷の心配そうな声に、イグノスは答えない。それが答えでもある。


『彼女に渡すタブレットだけど』

『はい、私のものとほぼ同等の機能を持たせてあります』

『うん、初期設定では開拓と建設、この2種類だね』

『ポイントが増えれば、それを利用して、新たな機能をダウンロードすることができるようにしてあります』

『稲荷のいる世界は、色々と面白い仕組みがあるねぇ』

『いやはや、人族の考える力は、凄まじいですな』

『……本当に。同じ人族なのに、なぜ、こうも進化の過程が異なるんだろうねぇ』


 寂しそうなイグノスの声。

 稲荷は、なんと答えていいかわからず、手元の五月用のタブレットに目を落とす。見た目は稲荷のものとまったく同じだ。


『ああ、そうだ。一応、ボーナスポイントもつけてあげようか。多少、苦労かけるだろうから。トイレとお風呂の設置ポイントは割引して、と』

『そうなると、『収納』機能が、もうダウンロードできる対象のようですね』

『ん? まぁ、いいんじゃない。これから、色々やってもらわないとだし』

『そうですな……あちらでも苦労しているようですし、こちらで充実した生活をしてくれればいいのですが』

『……そうなの?』

『身内の縁が薄いようで』

『あ、それはきっと……私のせいかな』

『……加護が呪いになってましたからねぇ』

『でも、こっちでは大丈夫でしょ。何せ、創造神たる私の加護なんだから』


 姿が見えなくても、イグノスのニンマリとしている顔を想像してしまう稲荷。

 テントを設営しおえて、腰に手をあて伸びをしている五月へと目を向ける。そんな彼女の頭の上に浮かぶウィンドウの文字に、稲荷も柔らかい笑みを浮かべる。


*****


名前:望月五月

年齢:27


加護:イグノスの加護

職業:元聖女

備考:移住予定(確定)につき、要注意


*****


『さて、私は契約書と請求書の準備をしましょうかね』

『よろしく~』


 二柱は五月を残し、その場から音もなく立ち去ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ