第192話 頑張って準備したお土産は……
翌朝、目の下に大きなクマを作った私の手には、パンパンに膨れ上がった、少し小さめな袋タイプのリュックが2つ。
この冬の手慰みにと安そうな布を色々と買いこんでいたのを掘りだして、夜なべして作った。さすがにミシンのような丁寧な縫い方にはなってはいないが、じっくりみなければ、まぁ、なんとかいけるだろう。
1つは、キャサリンにピンク系、もう1つはサリーに黄色系のパッチワーク柄。口を引っ張る紐の先には、ホワイトウルフの毛でできた白いボンボンが付いている。このボンボン、自分の不器用さを痛感させられる作品だけど、そこは許してもらおう。
リュックの中に、移動中に食べられるようにと、ジッパー付きのビニール袋(大)に、飴や小袋に分けられていたクッキー、あちらで買ったリンゴとマンゴーのドライフルーツを入れた。チョコレートも考えたけれど、ベトベトになりそうなので諦めた。
それに私の手作りブルーベリージャム。しっかり熱湯消毒した小さめの瓶に入れたので、そこそこもつとは思うんだけど。
朝食の後、キャサリンたちにリュックを渡す。ちょっと重いかな、と思ったけれど、2人とも嬉しそうに受け取ってくれたので、良しとする。
満足そうにリュックを背負った二人が公爵様たちにみせびらかしているさまは、なんとも可愛らしい。
「キャサリン様、サリーちゃん」
私の声に、2人が駆け寄る。私は2人に左手首を差し出してもらうと、これは冬の手慰みで作ったミサンガをつけてあげた。あちらの刺繍糸と、ホワイトウルフの毛で作った毛糸をベースに作ったものだ。ホワイトウルフの毛糸、さすがにマフラーやらセーターを編めるほどの量を作る根気がなく、ミサンガにはちょうどいいくらいにはなっててよかった。
あとは長屋に置いてあった洋服や、ビーチサンダルを風呂敷でひとまとめに入れた。それに、自分用に買っておいていた防犯スプレー2本と蚊取り線香。使い方はキャサリンがわかってるから、サリーの叔父さんに渡す。頭を傾げていたけれど、後で彼女に確認してくれとお願いする。
「気を付けて帰るのよ」
「……また来てもいいですか?」
キャサリンがさっきまでとは違い、泣きそうな顔になりながら聞いてきた。
「そうねぇ……公爵様がいいと言ったらかな」
「それなら大丈夫! 絶対、絶対、説得するわ!」
ギュッと両手を握りしめ断言する姿が可愛くて、思わず抱きしめる。
「さて、あとは、これ」
ジッパー付きのビニール袋にいっぱいのサクランボだ。ちゃんと洗ってある。もうほとんど採り切っていたものを、ガズゥたちが早朝から山の中を探しまくったらしい。
誘拐されてからずっと一緒にいたガズゥたち。種族の壁を越えて仲良くしていた彼ら。公爵が来てから離されてしまったので、せめてこれだけでも、ということらしい。
キャサリンたちは嬉しそうにサクランボの入った袋を受け取ると、エイデンのそばにいたガズゥたちへと走っていったのだった。





