第191話 エイデンのひとにらみ
狭いお風呂ではあったものの、公爵様ご一行は久々のことのようで、かなり満足してもらえた模様。お風呂の使い方は、キャサリンたちにお任せ。得意げに説明している姿は、こっちもニヤニヤするほどだった。
食事に関していえば、エイデンたちが狩ってきたフォレストボアに歓声があがったのは言うまでもない。東屋の目の前で解体し始めようとしたので、よそでやれ!と怒鳴ってしまった。
フォレストボアの焼肉も人気だったが、トマトベースで作ったミネストローネ風のスープもすぐに無くなったのでよかった。
ただ、お米には馴染みがなかったのか、最初は誰も手をつけてくれなかった。しかし、キャサリンたちが美味しそうに食べてくれたのをきっかけに、こちらも完食。それ以外は、つつがなく、和やかな空気で終わった。
ただ、若干、サリーの叔父さんからの視線が気にはなった。特に、ガズゥたちが同じテーブルの端に座って食べていたのが気に入らなかったようだけれど、エイデンがガズゥたちと話している様子に、遠慮はしてくれたようだ。
そして、食後に公爵様からと、お礼にと何やら重い革袋を、サリーの叔父さんから渡された。大きさでいえば、私の片手にのるくらいだけど、それにしてもだいぶ重い。もしかして、と思って中身を見ると、金色ににぶく光る硬貨がいっぱい。
これは、あれか、金貨とかいうヤツか!?
「いやいや、こんなにいただくわけには」
「いえ、これは是非に受け取っていただきたく」
そう言ったのはサリーの叔父さん。まさに有無を言わせずって感じで、恐いんだけど。
「おい」
エイデンの冷ややかな声。あ、これはダメなヤツだ。サリーの叔父さん、急に顔色が青ざめてる。
「あー、はいはい、ではありがたく受け取ります!」
私がじろっとエイデンの方に目を向けると、ニコッと笑顔を返してきた。
食事の後片付けはガズゥたちと一緒にやるからと、キャサリンたちは公爵様のキャンピングカーな馬車で休ませることにした。中がどうなっているのか非常に気になったけれど、そこは我慢した。
一応、結界の外ということもあるので、ホワイトウルフたちにも、様子を見てもらうのをお願いして、私は自分のログハウスに戻った。
明日にはもう出て行ってしまう彼女たちのために、何か渡せないかと思ったのだ。
「でも長時間の移動になるのよね」
LEDのライトを点けた部屋で、何にしようかと悩む。長期保存できる食べ物か、何かアクセサリーみたいな物とかが無難なんだろうか。
私はうんうん唸りながら、『収納』の中に溜め込んでいる物たちを見つめた。





