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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
子供たちとの別れの夏

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第188話 知らない人!?

『五月~、そろそろ見えてくるぞ~』


 長屋でキャサリンたちの格好を整えていると、結界の外にいるはずなのに、エイデンの声が聞こえてきた。この前の念話とは違う。普通に声が聞こえてきたのだ。拡声器もなしにこれって、どんだけ大きな声してるのよ? 


「もう、そんな時間!? まずい。キャサリン、サリー、大丈夫?」


 二人の髪を私のお手製のシュシュで一つにまとめる。着ているドレスは、稲荷さんの奥さんが用意してくれたもの。獣人の子供たちの服以外にも、こちらの女の子が着るドレスと靴も用意してくれたのだ。サイズ感もぴったり。稲荷さんの奥さんって何者なのか、凄く気になる。

 キャサリンは、淡いピンクに、さし色にレモンイエローが入ったドレス。白いパニエでふんわり膨らんでる。あっちじゃ七五三でもなきゃ着なそうな服だ。サリーの方は黒いワンピースにふりふりのレースがついた白いエプロンで、まさにちびっ子メイド。


「もう、可愛すぎるっ!」


 私の叫びに2人とも、少し照れたような笑顔。もう、余裕があったら絶対スマホで写真撮るのにっ! しかし、そんな時間はないので、二人に靴をはかせると、急ぎ足でエイデンのところに向かう。

 エイデンのそばまで行くと、彼の言葉通り、少し遠くに土埃を舞い上がらせた何かがこっちに向かっているのが私でもわかった。

 キャサリンたちはソワソワしながらも、期待感に溢れた目もしている。

 

「大丈夫よ」

「はいっ」


 キャサリンの元気な返事に、笑顔で応えて、再び、前を向く。


「……な、なんか、凄い勢いでくるね。馬車って、あんなに土埃、舞うもの?」

「……私も、初めてみましたわ」


 徐々に近づいてくる何か、エイデンのいう通り馬車なのだろうけれど、その馬車本体がかなり大きく見える。どうも、その後方に、馬に乗っている人達が数名、その後を追いかけているようだけれど……土埃、大丈夫なんだろうか。

 そんな私の心配をよそに、馬車の窓が開き、茶色い髪の中年男性が身を乗り出した。


「……!」


 必死になんか叫んでるようだけど、馬の蹄の音や馬車の車輪の音で聞こえない。


「キャサリン、あの人は?」

「……存じません」

「えっ」


 キャサリンの顔が酷く歪んでいる。


「でも、もしかしてサリーちゃんのお身内とかじゃないの?」


 彼女の腕にGPS付いてるっていってたけど。


「わたしもしらないひとです」


 サリーもびっくりした顔をしている。

 マジか。え、でも、あの男の人、かなり必死な顔をしてるよね。

 どうしたものかと迷っているうちに、馬車が近くまで来て止まり、中年男性が馬車から飛び降り、私たちの方に駆け寄ってきた。見るからに地味な格好で、貴族って感じはしない。あんな立派な馬車に乗っているのに。


「キャサリンッ!」


 男の人の声に、びくりと身体を震わせ、2人が私の背後に隠れた。

 そりゃ、そんな大声で知らない人に叫ばれれば、私だって恐いわ。


「まったく」


 エイデンの呆れたような声が聞こえたので、彼を見上げる。

 何? と問いかける間もなく、指パッチンするエイデン。


「あっ!」


 今度はキャサリンが驚きの声をあげた。

 視線を前に向けると、駆け寄ってきていた男の人の姿が、まったくの別人に変わっていた。

 

 ――誰、あのイケメン!?


 洋画とかに出てきそうな、ド定番な金髪に青い目に整った顔、そのイケメン具合と不釣り合いな、地味な服。茶髪にはあってたかもしれないけど。


「お父様っ!」


 そう叫ぶと同時に、キャサリンは駆け出していた。

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