第1話 失恋して自棄キャンプに旅立ちました
まだ寒さの残る春。5年付き合った彼氏から、別れを切りだされた。
そのうち結婚するんだろうな、とは思っていたし、彼の実家にも、挨拶にも行った。それなりの結婚資金も貯めていた。
だけど、最後の一押し、というのが足りなかった。
半年前に彼が異動になってから、互いに仕事が忙しくなった。最後にまともに彼と会ったのは、一か月くらい前。同期の送別会の時だ。その時も、いつもと変わらない彼だったのに。
気が付けば、異動先の女性の先輩(当然、私よりも年上)と、付き合いだしてたとか。それも、その女性の先輩っていうのが、既婚者だという。
それを別れ話の時に、私に言う?
その上、元カノなりたての私に相談とかする?
「馬鹿じゃないのっ」
三連休の前日の深夜。
私は車のハンドルを握りながら、ぶつくさ文句を言う。
マンションの部屋の中には、もう彼氏の荷物は何も残ってはいない。全て、ゴミとして捨ててしまった。すっきりさっぱり、彼の存在はなかったことにしてやった。
ただ、そんな中、前から彼氏とキャンプに行きたいね、なんて言って用意していたキャンプ道具一式だけは捨てられなかった。それをレンタカーの軽自動車に積み込み、一人で向かうは、ソロキャンプ。前から行きたいと思っていたキャンプ場へと向かう私。
――あんなこともしよう。
――こんな料理も作ってみたいね。
そう言いながら、二人でキャンプの動画を見たり、キャンプ雑誌を読んだり。
結局、一回も行くことはなかった。
楽しかった日々が脳裏をかすめ、思わず、涙が浮かぶのをこらえられなくなる。
「うっ、うっ」
このまま、運転を続けるのはまずい。
そう思うくらいに、涙で目の前がぼやけてきた私は、道路の路肩に車を止めた。
「……馬鹿じゃないのっ!」
私は嗚咽をもらしながら、ハンドルに突っ伏したまま、しばらく泣き続けた。
「はぁ……いい加減にしないと着くのが遅くなるか」
涙を拭って、バックミラーに目を向けると、ブスな自分の顔が見える。
「最悪だわ」
何枚かのティッシュペーパーで、思い切り鼻をかむ。
免許を持っていても、ほとんどペーパードライバーの私は、高速道路を走る自信がない。なので下道を通っていくとなると、移動時間がかかってしまうのは当然のこと。
途中、コンビニで買い出しをする。すでに色々と買いこんではいたものの、眠気覚ましに寄ったついでに、ついつい手が伸びてしまった。車の後ろに積んでいたクーラーボックスにビニール袋ごと、突っ込む。
空が薄っすら明るくなってきた頃、白い靄が出始めていた。
朝の通勤時間などに、霧で真っ白になって前が見えないなんてことはたまにあるけれど、車の運転をしている時ほど、怖いことはない。ちゃんとライトをつけて走っていても、不安なものは仕方がない。特にキャンプ場は山の中、ガードレールがあるのはわかっていても、怖いものは怖い。
車の備え付けのナビが、もうすぐ目的地だと、教えてくれた。