第181話 古龍、ストーカー行為を認識する
1週間のお仕置きのおかげで、獣人の子供たちは……なかなか逞しくなっていた。
元々、身体能力が高いせいか、1つ目の走らされることは、ほとんど苦にならなかったらしい。全然、お仕置きになっていない。
一方で草むしりの方が辛かったようだ。ずっとしゃがんで、草むしりだものね。
でも、おかげで、立ち枯れの拠点周辺と、道沿いや山を囲う柵の周辺の草はほぼなくなった。といっても、また生えてくるんだろうけど。
同じように1週間のお仕置き後の古龍とノワールなんだけど。
『五月~!』
「五月~! へぶっ!?」
女の子組と一緒に、立ち枯れの拠点の柵の外、ハーブ類の鉢植えに水をやっている時に、彼らはやってきた。
ノワールは結界をスルーして私に抱きついてきたけれど、古龍はいまだに入れないようにしているので、結界に衝突して、倒れこんだ。無事だろうな、きっと。
「……反省した?」
『した! した!』
「ちゃんと、周りをよく見ること。それと……古龍にこっちの情報は流さないこと」
『……はい』
「本当に?」
『な、なるべく?』
「……どうやら、もう1週間、追加が必要のようね」
『いや、絶対、絶対守るっ!』
そんなに古龍と一緒にいるのが大変だったんだろうか。と、結界の外で立ち上がって、しょんぼりしているイケメンアラサー古龍に目を向ける。
そういうウルウルした瞳は、もっと可愛い子がするから、絆されるんだけど。
「古龍も、ストーカーみたいなことはやめてください」
「……すとーかーとはなんだ?」
「こっちが気持ち悪いって思うくらい、つけまわす人のことですよ」
「なっ!? お、俺は、つけまわしてなど」
「ノワール使って、私の居場所を把握したりとか、いきなり、まるで見てたかのようなタイミングで念話で話しかけてきたりとか」
「そ、それがいけないことなのか?」
コテリと頭を傾げても、可愛くないですからっ!
「気持ち悪いって言ってるんですっ! そりゃぁ、確かに前世とかでは聖女とかで、古龍とは親友だったって、稲荷さんからは聞きましたけど。でも! 今の私はあなたのこと、ほとんど知らないので! 知らない人に自分の行動を一々把握されてるとか、ありえないでしょ!」
「あ、ああああっ!」
私の怒りの声を上回る大きさで、いきなり声をあげる古龍。
そんな、世界が終わったみたいな顔をしないで欲しい。
「そ、そうであったな……俺は、その、五月のことをずっと見てたから」
「……だから、それが気持ち悪いっていうんです……」
――わかってないね。この人は。
そう思ってジッと彼を見ていると、今度は、うるうるではなく、本当に涙を流し始めた。おいおい、いい年した……いや、実際いくつかは知らないけど……大人に見える男が、泣きますかっ!?
「す、すまぬ。どうも、その、舞い上がっていたようだ」
「そ、そうですか」
「ずっと、ずっと待っておったのだ……聖女が戻ってくるのを」
ポロポロと涙を零し続ける古龍を、私は何とも言えない気持ちで見つめるしかなかった。





