第170話 『タテルクン』のメニューが増えてた!
服を着替えた子供たちが、レジャーシートに座っている。可愛いらしい彼らに、ワンプレートにまとめて載せた朝食を渡す。
ガツガツと食べる子供たちの中、貴族のお嬢様であるキャサリン一人だけは、上品に食べている。環境が環境なんで、お皿を手にしながらなんだけれど、慣れたようにフォークを使って、目玉焼きを食べている。
私も一緒に食べながら、空を見上げ、そして周囲を見渡す。
この敷地には、今は子供たちしかいないのだけれど、実は結界の周囲にはホワイトウルフたちがいたりする。ユキとスノーが、見守ってくれているのだ。
こうして食事をしていても、やっぱり気になるのが、視界に入ってくる小屋だ。
先に食事を終えた私は、そのままタブレットを取り出し、『タテルクン』の確認をする。
最近は柵ばかりを作っていたから、他の建造物のメニューをろくに確認していなかったのだ。でも、これまで作ってきた回数を考えれば。
「やった、メニュー増えてる」
予想通り、『タテルクン』のメニューがバージョンアップしていた。
「といっても、かなり簡単な物が増えてるみたいね」
例えば、屋根だけの東屋みたいなのや、まるで江戸時代の長屋のような平屋の建物だとか。まるで、慌てて追加したみたい。もしかしてイグノス様?
平屋の建物は、一部屋しかないようで、それを連結して作ると長屋っぽくなるみたい。これだと、ガラス素材を使わないで済みそう。一時的なものと考えれば、それでも十分だろう。ただ、台所みたいなのはないから、外に調理場を作るしかないか。
「東屋の下に、調理場だけ作ればいいか……え、何、公園にある水飲み場みたいなのもあるじゃん」
さすがに蛇口はついていないけれど、石像から湧き水が零れていくようなタイプの水飲み場みたいなのがある!
調子に乗って、つらつらとメニューを見ていくが、中でも絶対一生作らないだろう、と思える物を発見して笑ってしまう。
「お城って、作りたくもないわ」
洋風と和風、どっちも載ってるけれど、無理だから。絶対、イグノス様が冗談半分に追加してる気がしてきた。
普通に洋風建築のお屋敷みたいなのもあったけれど、これだって石造り。どこにそんな石があるのよ。もしかしたら、山の中を探せば、それに見合うような石があるかもしれないけど、今の私には木造一択しかない。
「さつきさん、何を見てるの?」
一番に食べ終わったガズゥが私の手元に目を向ける。
「ん~、ちょっと家を作ろうかなぁってね」
「いえをつくる?」
「そう。あれじゃ、雨が降ってきたら、入ってきそうだしね」
なるほど、という感じで頷きながら、ちびっ子たちの食べ終えた皿を集めてくる。
「あの、おれたちでもてつだえること、ありますか」
ガズゥの言葉に、キャサリンとサリーも、まだ食べ終えてないけれど、顔を向けてきた。
「ホワイトウルフたちみたいな、かりはできないけど、きのうみたいに、きのみをとってくるとかはできます」
「できる!」
「……できる」
前向きな子供たちの言葉に、思わずキュンとなった私なのであった。





