第165話 キャンプ飯といえばカレーだと思うんですが
今日はもう暗くなってきてるから、シンプルにレトルトのカレーで我慢してもらう。ちゃんとお子様用のカレーを買ってきた私。まとめて安売りしてたから、だけではない。
私が荷物を出している間に、稲荷さんは何やらキャサリンとサリーと話をしていたようだ。何を話していたかは気になるところだけれど、それよりも食事だ。
彼らの食器を置くための大きなテーブルはないので、ビニールシートを広げる。直置きになるのは我慢してもらわねば。食器の他に、調理用のミニテーブルを置く。獣人の子供たちは、ビニールシートに興味津々。
その隙に焚火の方で、ホームセンターで買った大きめの鍋で湯を沸かす。薪用に取っておいた丸太の上に、カセットコンロをのせて、土鍋で米を炊く。一応、フランスパンも買っておいたので、それも出すことにする。
レタス一玉を取り出して、どんどんむしる。それとプチトマトをザルにいれて、ざっと洗う。キュウリも洗って、斜めに薄切りにする。プラスチックの食器を多めに買ってきて正解。人数分に分けて、買ってきたドレッシングをかけるだけ。
私が料理をしていると、獣人の子供たちの興味は私の手元に移ったらしい。
「それ、なに?」
最初に聞いてきたのはマル。
「どれのこと?」
「この赤いの」
「ああ、プチトマトね」
「ぷちとまと?」
「はい、あーん」
「? あー」
大きく開いた口に、プチトマトを1ついれてあげると、むぐっと食べた。
「ん!? 甘い? でも、すっぱい」
「おいしい?」
「うんっ」
目をキラキラさせてるので、ついつい頭を撫でたくなるけど、まだ料理の途中だ。羨ましそうなガズゥとテオにもぽいっと入れてあげる。
「むっ!?」
「……うまい」
「そう? よかった」
サラダの用意を済ませて、フランスパンを適度な厚さに切って、大きめのカゴに入れる。その頃には、レトルトの方もすっかり温まっているので、器の方に盛りつける。
「いい匂いですねぇ」
「ごめんなさい、稲荷さんの分はないです」
「……いいです。うちで夕飯がありますから」
そういえば奥さんがいるって言ってたっけ。ちょっと気になるけれど、それよりも子供たちだ。
盛り付け終わるころには、米も炊きあがった。土鍋の蓋をあけて、炊きあがった米の匂いについ、にんまりする。
子供たちは目の前に置かれたカレーの匂いに惹かれているけれど、大人しく待っていた。偉い!
「パンもあるけど、ご飯食べる子」
「……ごはんってなに?」
ガズゥがきょとんとした顔で聞いてきた。まさかの質問に私の方が固まる。
いや、もしかして、ここはパン文化なのか。
「あ、うーん、とりあえず、盛ってみるか」
器に盛って差し出すと、ガズゥが匂いをクンクンと嗅いでいる。まさに犬系って感じでかわいい。テオとマルも欲しがったので、彼らにも渡す。
「さて、じゃあ、どうぞ召し上がれ」
私の言葉と同時に勢いよく食べだしたのは獣人の子供たち。女の子組は、むしろ、恐る恐る。
「キャサリン達は無理しなくていいから。パンにつけて食べてみて」
こくりと頷くと、キャサリンはフランスパンにカレーを少しだけつけて食べた。
「!?」
大きな目がより一層大きくなって、零れそう。
「大丈夫? 辛くない?」
「……ちょっとからいけどだいじょうぶ」
サリーの方は大丈夫かなと思ったら、さっきの恐々してたのが嘘のよう。昨日のあのボロボロな状態はどこにいったのか、と不思議に思うくらい、獣人の子供たちに負けないくらいにがっついていた。カレーって凄い。





