第163話 買い出しと稲荷さんに相談
ガズゥたちはノワールにビビって、結局、ログハウスの敷地には入ってこなかった。あんなちびっこいのに、やっぱり魔力がネックなのか。私はいまだに全然感じ取れないんだけど。
仕方ないので、ガズゥたちはホワイトウルフたちと立ち枯れの拠点に戻っていき、私は買い出しのために、そのまま軽自動車であちらに向かうことにした。
まずは、子供たちの服だ。さすがに、Tシャツ1枚だけを着たきりにさせるわけにもいかない。まさか、結婚も出産もしないうちに、子供服を買いに行くことになるとは思わなかった。
「え、でも、いつもいくホームセンターとかに子供服とかなかったよね」
スーパーだって食料品しかなかったはず。仕方がないので大型のショッピングモールを探して向かうことにした。サイズやら、デザインやら、正直わからなかったけれど、安くなっているのをまとめ買いしてきた。
しかし、子供服といっても馬鹿にならない。枚数買うと、けっこうな金額になってしまった。服だけではなく、下着もそうだし、あとは靴は難しかったので、ビーチサンダルを買ってみた。
「気に入ってもらえればいいけど……キャサリンには厳しいかな」
後部座席に積まれた、洋服の入った紙袋に目を向ける。
汚れてもよさそうなのばかりなんで、貴族のお嬢様には嫌がられるかもしれないかな、と、ちらっと思ったけど、そこは我慢してもらうしかない。
それからは、スーパーで食料を、ホームセンターでは立ち枯れの拠点に必要そうなもの(ライトとか寝具の類)を買いこんで、再びログハウスへ戻る。
「そうだ、稲荷さんに相談しとかなきゃじゃない」
すでに日が暮れ始めているせいで、気持ちがはやる。しかし、ここで事故ったら、目も当てられない。
なんとか、管理小屋についたころには、完全に日が落ちていた。でも、まだ管理小屋に灯りが着いているから、誰かしらいる!
「こんばんは!」
人気のない管理小屋に私の声が響き、奥の部屋でごそごそと誰かがいるのがわかる。
「すみませーん」
「はいはい」
――よかった。まだ、稲荷さんがいてくれた。
「どうしました?」
すっかり帰り支度を済ませている稲荷さんだったけれど、私の方はそれどころではない。
「あの、あちらのことで相談が」
「何かありました?」
「えーと」
この場で話し始めていいのか、と思ったら、今日はもうバイトの若者はいないらしい。
私はホッとしながら、昨夜からの出来事を稲荷さんに話す。
「まったく、どうしようもないヤツらは、どこにでも蔓延っているんですねぇ」
一通り聞いてくれた稲荷さん。なんか、目に見えない、何かが溢れているような気がするんだけど……気のせいだろうか。顔つきも、普段よりも、お狐顔なような……。
「とりあえず、一度、一緒に行きましょうか」
「え、いいんですか!?」
「はい。私もちゃんと状況を把握しておかないと……色々対応しなきゃいけないようですからね……はぁっ」
大きなため息をついた稲荷さんに、申し訳ない気分になりながらも、少しだけホッとしている私がいた。





