第162話 子供たち、ノワールと遭遇する
食事を終えて片付けをした後、獣人の子供たちにログハウスへと向かう道を案内する。さすがにキャサリンたちはまだ身体が十分に休めていなかったのか、食事を終えたらこっくりこっくりしだして、二度寝に突入してしまった。
私はバイクを押しながら、坂道を登る。エンジン音は彼らには爆音に感じるようなので、エンジンはかけない。私一人じゃキツイけど、ガズゥたちが手伝ってくれてるので、少しはマシだ。そんな私たちの後を、ホワイトウルフが2匹ついてきている。
ログハウスの敷地へと繋がる道の桜並木は、すでにさくらんぼを実らせている。
手を伸ばして取れるところの実を一つとって、味見をする。
「んっ、甘いね」
種を掌に吐き出す。その辺に落としたら、芽が出るかもしれないので、ポイっと山の斜面の方に投げた。
ガズゥたちからの物欲しそうな視線を受けて、いくつか取って渡してあげる。
「ん!?」
「あまいっ!」
「……おいしい」
皆がそれぞれ、さくらんぼの美味しさに感動している。
「もし、待っている間に小屋においてあるブルーベリーでも足りなかったら、ここのさくらんぼをとって食べてもいいよ。この道沿いにずーっとあるからね。あ、カゴが空になったら、ここに入れてキャサリンたちにも分けてあげてくれる?」
その言葉に子供たちの目がキラキラしながら、コクコクと激しく頭を上下する。ふさふさになった尻尾も盛大に揺れている。
「でも、食べ過ぎて、お腹を壊さないように……そうだ、ガズゥたち、トイレの使い方、教えてくれた?」
「ま、まだ!」
「そうか、後でちゃんと教えてあげてね?」
しっかりと頷くガズゥの頭を撫でると、ログハウスの方へと歩いていく。
敷地に入ろうとして、ガズゥたちが止まった。
「どうした?」
「あ、あの、ここは?」
「ここが私の家のある場所よ。一応、中に入って」
おずおずと入ってきたガズゥたちだったけれど、急にピタリと足を止めた。
何事? と思ったら。
『五月~』
「ノワール!?」
ノワールが玄関から出てきたかと思ったら、ぴゅーんと飛んできた。私、バイク持ってるから、やめて! 慌てて、バイクを止めてノワールを抱きとめる。
「うわっと。どうしたの」
『ちょっと寂しかっただけー』
うりうりと頭をこすりつけてくるノワール。
ちょっと、重いんだけどー!
「あ、そうだ、ガズゥたちにも紹介しないと……って、どこいった!?」
振り向いたら、ガズゥたちの姿が見えない。ホワイトウルフたちも、なんかさっきまでより離れてない!?
『あ、ごめーん。魔力が濃すぎたみたいだ……』
これがいわゆるテヘペロとかいうヤツか!
可愛いけど、もうちょっとセーブを覚えようね、と、すごく思ったのであった。





