第161話 朝食はお気に召したようです
自分はシリアルで済ませてきたのだけれど、子供たちのを作っているうちにお腹が減ってきてしまったので、後で自分の分の目玉焼きを焼こうと心に誓う。
相変わらず、ログハウスの敷地で飼っている鶏の卵はデカいので、けっこう立派な目玉焼きが出来上がる。塩コショウをササッとかける。ソーセージはこの前大量買いしてあったのを持ってきた。
目玉焼きとソーセージ、それにバター入りのバターロールを紙皿に載せる。それにプラスチック製のフォークを添えて、子供たちに渡すと、3人ともが不思議そうに皿を見る。
「あ、もしかして、紙皿ないのか……まぁ、いいか。フォークは使い方、わかる?」
「わ、わかるっ」
ガズゥが代表して答えたので、ちびっ子二人はそのまま彼にまかせることにした。
小屋の中では、女の子組がまだ寝ている。その間に私はレトルトのおかゆを温めることにした。こっちは深さのある紙皿にいれて、プラスチック製のスプーンを添えた。
「あ、起きたかな」
もそもそと先に動き出したのは、キャサリンだった。まだ、動き回る余力はないかもしれないと思ったので、彼女たちのところにおかゆを持っていく。
「おはよう。少しは食欲ある?」
「あ、おはようございます」
「……おはよう……ございます……」
差し出した深皿を受け取って、びっくりした顔をしたキャサリン。プラスチック製のスプーンをしげしげと見た後、ゆっくりとおかゆを口にした。
「……おいしい」
キャサリンの声につられて、サリーもおかゆを食べ始める。
「ふっ!? んむっ!」
こっちは、なかなか豪快だ。口の周りに米粒がついてるし。
振り返れば、男の子組はそろそろ食べ終えそうだ。
お代わりを用意する余裕はないので、ブルーベリーをザルに入れて池でさっと洗ってくる。かなりの山盛りになってるけど、子供たちが食べたらあっという間になくなりそうではある。
彼らが食事をしている間に、私の自己紹介をする。昨夜は名前を言う暇もなかったもの。
「私の名前は、モチヅキ・サツキ、サツキが名前なんで、呼ぶときはサツキでいいよ。一応、そこの山の持ち主。あとは、ホワイトウルフたちの飼い主? になるのかな」
「サツキ……は、きぞくなのですか」
キャサリンがおかゆを食べる手を止めて、小さな声で聞いてきた。
「ううん、違うよ。平民だよ」
「でも、みょうじがあるのは、きぞくだけなのに……」
「え、あ、そうなの?」
まさかの、貴族イコール苗字持ちとは。確かに、ガズゥたちは苗字は名乗ってなかった。
唯一の貴族はキャサリンだけ。きっと、お姫様扱いされてたのだろうけれど、今の環境じゃ、無理だわね。
できれば、早いところ、自分たちの家に帰らせてあげたいけれど。
「まずは、もう少し体調を整えないとね」
獣人の子供たちは、すでにそこそこ元気には見えるけれど、女の子たちはまだ長距離を移動させるのは無理そう。
「午後からちょっと買い出しに行ってくるから、ガズゥ、お留守番任せてもいいかな」
「……まだ、ここにいてもいいの?」
「構わないわ。もしかしたら、まだ人さらいとかが来たらマズイし。ここだったら、結界があるし、ホワイトウルフたちもいてくれるから」
そう言って周囲を見ると、のんびり朝寝をしているホワイトウルフたちに目を向ける。ユキとスノーが、小屋の近くで2匹一緒に寝ていた。
「一応、このパンとブルーベリー、置いていくね。帰ってきたら、ご飯また用意するから」
「……もどってくる?」
おっと。マルがシャツの端をつかんできた。可愛すぎるぞっ!
「戻ってくる、戻ってくる」
ギュッと抱きしめてあげる。昨夜、お風呂に入ったから、今日はボディーソープのいい匂いがまだ残っていた。





