第158話 さぁ、お風呂に入ろう!(2)
ガズゥの言葉に、一瞬固まる。
「え、お風呂って知らないの? 身体の汚れをお湯につかって洗い流すことなんだけど」
「からだのよごれ? おれたち、ぬのきれがあれば、いい」
「うん?」
「あそこ、あのいけのみず、つかっていい?」
「まさか、布を濡らして、身体をふくとか言ってる?」
「おれたち、いつもそう」
マジかー。
いや、まぁ、あの臭さからして、予想してしかるべきだったのか。てっきり、牢に閉じ込められている間に、なにやらいろいろあっての、あの臭いかなぁ、と思ってたんだけど。もしかして、こっちの世界の普通は、ソレなのか。
いや、でも、キャサリンたちは風呂を嬉しそうに言ってたし……もしかして、上流階級とかでは普通でも、一般的ないわゆる平民には普通じゃないのかしら。
しかし。
「いや、せっかくだから、ガズゥたちもお風呂入ろう」
「……おふろ、はいる?」
「うん、まぁ、ちょっと待ってて。さぁ、キャサリン、サリー、お風呂にいこうか」
風呂小屋のドアを開けると、湯気がもくもくと出てくる。脱衣所はないので、この中で着替えてもらうしかない。さすがにキャサリンたちが小さくても、3人は狭いけど、仕方がない。
先に身体を洗ってから湯舟につかってもらわないと、確実にお湯が汚れる。男の子たちが入る前に入れ替える時間がもったいないから、きっちり洗わなきゃ。
キャサリンは大人しく身体を洗わせてくれて助かった。泡のボディーソープが不思議だったようで、2人ともが何度もポンプを押したのは困った。シャンプーとリンスもしてあげたいけれど、サリーの方がこくりこくりとしだしたので、頭もそのままボディーシャンプーで洗った。うん、流したお湯が、なかなかの色合いになってる。これ、男の子たちだったら、どうなってしまうんだろう。
「さぁ、2人とも、湯舟に入って」
洗った頭をタオルで包んで、並んでお風呂につかっている2人。頬を赤く染めて、すぐにうつらうつらしだす。
「じゃあ、10まで数えたら、あがろうか」
「かぞえる?」
「キャサリンは数えられない?」
「いいえ! できるわ!」
「サリーは?」
ふるふると頭を振る。
「じゃあ、キャサリンと一緒に数えてみよう! せーの」
「いち、に、さん、し……」
たぶん、これ、日本語じゃないんだろうなぁ、と思いながら、声をあわせる。サリーも一生懸命にキャサリンの口真似をしていて、可愛い。
数え終えた2人を風呂から抱き上げて、バスタオルで拭いてあげる。非常用の紙パンツを履かせてから、私のTシャツを着せた。私のサイズだから大きいかもしれないけれど、今は本当に非常時だから勘弁してもらおう。彼女たちにしてみたら、Tシャツはちょっとしたワンピースサイズだ。
風呂小屋から出てきた2人は、ボディーソープのいい匂いになった。そのせいか、ホワイトウルフたちがこちらに顔を向けている。そして、獣人の男の子たちもだ。
「さて、次は君たちだね」
毛布を取り出し、女の子組をくるんで小屋の片隅に座らせると、焚き火のそばにいた男の子組へと目を向けた。





