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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
山を買うまでの半年のできごと

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第15話 どんどん追い詰められていく

 異世界キャンプをしている間、スマホの電源は入れてあったものの、電波が届かなくて、平穏な日々を過ごせた。

 そう痛感したのは、1日買い出しに行っていた日だけ電波が届いたせいか、LI〇Eと留守電の通知が来たからだ。元カレと家族からだ。

 それぞれのメッセージ自体はゴールデンウィーク初日だけだったので、どっちもあえて連絡はしなかった。


 それから数日が過ぎ、本当に、ほんっとうに、異世界ではのんびりできたんだな、とつくづく思うようになった。


「望月、例のO社の件、どうなってる」

「あ、えと、それは佐々木さんが」

「何、佐々木? あいつ、今、どこだ」

「佐々木だったら今日は休みですよー」

「はぁっ!? 明日には先方に資料提出しなきゃならんのだぞ!?」


 休み明けに、出社拒否症になる先輩や、トラブルメーカーの後輩の尻ぬぐい。その上、元カレからのLI〇E攻撃と、心休まる日がなくなった。

 平日は残業の日々。週末は下手をすれば休日出勤。このままじゃ、本気で身体を壊すかもしれない。

 そんな状態が2か月ほど過ぎた頃。夏の暑さに負けたのか、私は過労で倒れてしまった。そんな私に追い打ちをかけたのは、母親だった。


『五月? 夏休みなんだけどね』


 短期間とはいえ、病院に入院している私に、母親から義妹のことで電話がかかってきた。

 こっちで予備校に通わせたいから、泊まらせて欲しいのだと。

 静かな病室に、キンキンと電話越しの母親の声が響く。


「……無理」

『そんな意地悪言わないでよ』

「私、今、入院してるの。だから無理」

『え、なんですって』

「にゅ・う・い・ん」

『また、そうやって嘘ついて』

「もう、いい」


 プチッ


 最悪な気分で通話を終わらせてスマホの電源を落とそうとした所に、メールが届いた。普段、スマホのメールアドレスは使わないのに、どこから届いたのだろう。不安に思いながら、メールのタイトルを見る。


『山、買いませんか』


 ……お稲荷様か。

 あまりのタイミングの良さに、もしかして、どっかから見てるの? と、周囲を見渡す。


「そんなわけないか」


 小さく呟きながら、メールを開く。


『もうすぐ夏休みですね。よければ、また、山に遊びに来ませんか。今度もお値段半額にします。できれば買ってくれると嬉しいんですが』


 無理やり異世界に行かせないあたり、まだまともな神様なのかもしれないけれど。


「どうせなら、キャンプ代、無料にしてくれればいいのになぁ」


 フフフと笑いながらメールを閉じる。

 しばらくすると、今度は元カレからのLI〇Eの通知。自分が不倫してるから誰にも相談できないからと、毎回、毎回、私に連絡してくるんじゃない!


 色んなことにうんざりしていた私。

 そんなタイミングで、この世界での最後の砦でもあり、未練でもあった父方の祖父母が亡くなったとの連絡が来た。

 退院して間もない、夏の暑い盛りのことだった。


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