第157話 さぁ、お風呂に入ろう!(1)
立ち枯れの拠点に戻ってみると、真っ暗の中、小屋の中で子供たちはそれぞれに固まっていた。獣人の子はガズゥを中心に、キャサリンとサリーは2人で抱き合っている。場所が変わったせいか、ホワイトウルフたちがいるせいか、獣人のマル以外、起きて待っていた。
――そうだよねぇ。怖かったもんねぇ。
この世界では、あんなのが日常茶飯事なのか、と思うと、背筋がゾッとする。
気楽に軽トラで旅に出ようなんて思うのが、明らかに場違いであるというのに気付かされる。
それよりも今は、子供たちのことが先だ。
お風呂に入ればきっと、少しは身体も心も休まるでしょ。
光の精霊の灯りは消えてしまっているので、周囲は真っ暗。私はタブレットを取り出して、LEDライトを取り出して灯りを点ける。その明るさに、子供たちはびっくりしている。うん、光の精霊の灯りって、もっと弱かったもんね。
私は『収納』から、ログハウスから持ってきたペットボトルを取り出す。紙コップに水をいれて、それぞれに渡す。最初はコップを不思議そうに見ていたけれど、すぐに水を口にした。冷やしてたやつだったから、ちょっと驚いているのが新鮮だわ。
「さて、みんなお風呂に入ってくれるかな?」
獣人の子供の方はピンとこないようで、首を傾げているけれど、女の子たちはビクッと身体を揺らしたかと思ったら、目がキラキラしだしている。
「お、おふろにはいれるの?」
キャサリンが期待のこもった声で聞いてくる。
「うん、今用意するけれど、キャサリンは1人でお風呂に入れるかな?」
「え、あ……」
おっと。もしや、貴族のお嬢様は、風呂には1人では入らないのか。
「わ、わたしがおてつだいしますっ」
サリーが健気にそう言ってきた。この子はキャサリンのお世話係か何かだったのか。身体は小さいし、年齢も下のように見えるけど。
「ん~、じゃあ、私もお手伝いしてあげるから、サリーも一緒に入っちゃおう」
「え、で、でも」
「キャサリン、ダメかな?」
「……サリー、だいじょうぶ?」
「だ、だいじょうぶですっ、アンナさんのおてつだいしてたから……」
アンナさんというのは先輩か何かなのだろう。やる気が出ているんだったら、さっさと入ってしまうに限る! もうかなり遅いんだし、身体をあっためて、ぐっすり眠ってもらうのが一番だ。
「じゃあ、今、お風呂用意するね。ちょっと待ってね」
LEDのライトを足元に置いてから、『収納』から風呂小屋を取り出して、ユーカリの木の近くに置く。風呂小屋の扉を開けて、中に入ってすぐにお湯を入れだした。
水が溜まるまで少しかかるので、その間に焚火をおこすことにした。LEDライトはお風呂場で使うので、小屋の方は暗い。それに、夜はまだ少し寒いのだ。『収納』にストックしてた薪や、枯れ木とか草(たんに捨て忘れとも言う)が役に立ってよかった、よかった。
「えーと、ライター、ライターっと」
カチッと音とともに火がついた。徐々に火が広がり、なんとか焚き火完了。その間に、お風呂はお湯でいっぱいになっていた。
「じゃあ、先に女の子、お風呂に入って身体を洗っちゃおうか。男の子組は、焚き火にでもあたってて」
「あ、あの、おふろってなに?」
ガズゥが不安そうに聞いてきた。
え、マジ?





