第155話 みんなのおなまえ、おしえてね?
唖然としているのは、私だけではなかった。
ガズゥたちも、びっくりしている。さっさとこの子たちもなんとかしなくては。
「ガズゥたちも中に入れなくちゃね」
『それぞれ名前を聞いてください。その名前を呼んでから、結界の中に入る許可を与えれば入ることができようになるはずです……ちなみに、彼らには私の声は届きませんので』
「はっ!? そうだったの!?」
慌てて、ガズゥとビャクヤを見比べてしまった。
勝手に、普通に会話が成り立っていた気がしていた。獣人とかって、凄いな、とか思ってたんだけど、勘違いか。反省。
「えーと、ガズゥはガズゥでいいとして、そっちのちびっ子たち、名前を教えてくれる?」
「おれ、テオ」
「……マル」
3人にも桑の実を与えながら聞いてみると、ちびっ子たちはあっさり名前を教えてくれた。
先に答えたテオのほうが、マルよりも少しだけ身体が大きいか。
それでも、ガズゥたちに遅れることなく、ここまで来れたのは、さすが獣人ってことなんだろう。
「じゃあ、女の子2人のお名前を教えてもらっても?」
ビャクヤの足元で抱き合っている女の子チーム。
大きい女の子の方は、ガズゥと同じような貫頭衣を着ているんだけど、薄汚れているのに、品のある顔立ちで、まるでビスクドールみたいな感じだ。そんな彼女が小さい子を守るように抱きかかえている。
「わ、わたくしは、キャサリン。キャサリン・エクスデーロ。エクスデーロこうしゃくのむすめですわ」
……うん?
今、なんて言った?
こうしゃく……こうしゃく!?
「え、こうしゃくって、どっち? 侯爵? 公爵? いや、そんなことよりも、貴族ってこと!?」
この世界、お貴族様、いたのかいっ!
「こ、こうしゃくは、こうしゃくですわ。お、おばあさまが、おうけからこうかなさったのよ」
おうけ……王家ね。うん、わかった。公爵か。そっかー、公爵かー。
「って、なんで、あんなところにいたのよ。っていうか、人攫いの馬鹿野郎っ!」
「わ、わたしのせいじゃ、な、ないもの……ううう、うわぁぁぁぁぁんっ!」
「はっ! ご、ごめんね! ごめんね! キャサリンを怒ったわけじゃないのよ。いい子、いい子ねぇ」
ギュッと抱きしめながら、頭を撫でてあげる。うん、臭いね。
でも、きっと、彼女にしてみれば、大事に育てられていただろうから、屈辱だったかもしれない。
「お、おじょうさま……」
キャサリンの服の裾を掴んでいるのは、もう一人の女の子だ。
「あなたの名前は?」
「サ、サリーともうします」
「そっか、サリーはキャサリンと一緒に攫われたの?」
「は、はい……いっしょにばしゃにのっておりました」
目に涙をためて、なんとか泣くのを我慢しているサリーに、私ももらい泣きしそうになった。





