第154話 ユキの番に名前を付けてみた
日は完全に落ち、山の中はすでに真っ暗。私の目では周囲の様子などわからない。
背中の子は熟睡中。前の子も、うつらうつらしている。それでも落ちないようにしっかり掴んでいるのだから偉いもんだ。
ここで私が倒れたりなんかしたら、3人とも、大けが間違いなしだ。
ビャクヤたちのおかげか、他の獣が襲ってくるようなことはなかったのは、よかった。
立ち枯れの拠点の近くまで戻れたのは、ほぼ深夜。月明かりで、ぼんやりと周囲がわかる程度。
「あれ? 拠点のところまで入っててよかったんだけどな」
ユキたち、ホワイトウルフの集団と、その中に獣人の男の子たちが座って待っていたのは、梅の木で結界を張っているギリギリのところ……そうか! 結界!?
「あ、まさか、結界のせいで中に入れない!?」
『うん、私は入れるけど、他は無理みたい』
「ありゃりゃ、どうしよう」
ビャクヤの上で麻紐をほどき、前に座っていた子といっしょに下りる。おんぶされてる子も、このままじゃ麻紐が食い込んで痛いだろう。急いでほどくと、そのままビャクヤの足元に2人いっしょに座らせた。
ここまで大人しくしてくれたので、今度は桑の実をあげてみた。うん、自分で食べるくらいにはなったみたいね。
『……五月様、よろしければ、ユキの番に名前をつけてやってください』
ビャクヤの提案に、一瞬固まる。
「……それって、この子も従魔にしろってこと?」
『はい。そうすれば番もですが、こいつの配下にいる他のホワイトウルフたちも、五月様の敷地の中に入ることができるでしょう』
「な、なるほど」
なんと、便利な!
しかし、ガズゥたちはどうしたらいいんだろう?
『子供たちは、五月様が敷地に入るのを「許可」されれば入れるようになるのでは』
「そうなのっ!?」
『はい。ただし、その者に五月様への悪意が芽生えた時点で、弾き飛ばされますが』
「……結界の機能、凄すぎじゃん」
どれくらい弾き飛ばされるのか、見てみたい気もするけど、そもそも、悪意が芽生えるようなことがないのが一番のはず。
私はまずは、ユキの番に名前を付けることにした。
……凄い安直に『スノー』だ。
名付けをした途端、スノーの身体が輝き、ユキと同じくらいの大きさにまで成長した。ユキのサイズに見慣れていたから可愛い、なんて思ったのに……厳つくなってしまった。
「……なんとまぁ」
『ありがとうございますっ!』
いきなり聞こえてきたのは、若い男の子の元気な声。これがスノーの声か。厳つさとのギャップがありすぎる。しかし、この声の若さからも、若くして群れのリーダーになってるあたり、この子も元々強い子なんだろう。
『五月様のおかげで、呪いも解け、こうしてユキとともにいられます!』
「う、うん。よかったね」
『はいっ』
そして、なぜか周囲のホワイトウルフたちも、ほんわかと光を放っているように見える。
『彼らも五月様の僕となりました!』
「し、しもべっ?」
『名付けはされていなくても、スノーの配下たちも、眷属に含まれるようになったのです』
「はぁ……」
異世界って、やっぱり凄い。





