第149話 臭い洞窟と、光の精霊
ブルーベリーの思わぬ効能に固まっていた私。
――そもそも、呪いって何ぞや!?
そんなオカルトな話があるのか。異世界だから? 異世界だからなのか!?
呆然としている私の目の前で、先ほどまで傷ついて倒れていたホワイトウルフが立ち上がり、頭を下げた。
「と、とにかく、治ったってことでいいのかな? あ、でも傷の方はまだわかんないから、包帯は暫くこのままでいいかな」
『さつき、私の番を助けてくれて、ありがとう!』
ユキが、大きな頭を私の身体になすりつけてくるんだが、力が強すぎて、倒れそうになる。
『こら、ユキ、さつきがたおれる!』
『はっ! ごめんなさいっ』
「あ、あははは……で、この子がユキの番ってことなのよね」
嬉しそうに尻尾を降っているホワイトウルフは、ユキと並ぶと……うん、かなり小さいね。体格差はあろうが、番は番ってこと、なんだろうなぁ。
撫でると素直に頭を掏り寄せてくる。うん、普通に大きなワンコな感じで可愛いぞ。
「さて、落ち着いたところで話を聞きたいんだけど」
『あの、五月様』
「うん? 何」
『実は、他にも……傷ついた者がおりまして』
ビャクヤが恐る恐る言ってきた。
「え!? なに、早く言ってよ、どこ? どこ?」
『さつき~、あのどうくつっぽいとこに、なんかいっぱいいるよ~』
「なんかいっぱいって……なによ……」
そういう言い方されると、こう、なんていうか、ヤバそうなのがいそうな気がしてくるじゃない。
ノワールがパタパタと羽を羽ばたかせながら、洞窟に向かおうとしたんだけれど。
『ノワール様、あれらには貴方様の魔力は強すぎます!』
ビャクヤの必死な呼び止めにより、ぷーっと頬を膨らませながら私の方へと戻ってくる。
『だってぇ。なかからつれださないと、さつきにはなにもできないじゃん』
「いや、私が行くからいいよ?」
『……でも、すごく臭いよ?』
「え」
その言葉に、どんな臭さなのか、ビビる。
しかし、そんな場所にいる何かを連れ出さなきゃいけないんだったら……我慢するしかないじゃない。
私は『収納』からタオルを取り出し、顔の半分をそれで隠す。臭気がそれで抑えられるとは思わないけど、何もしないよりマシ。
『中は暗いです。我らは見えますが、五月様には厳しいかと。光の精霊に灯りになってもらえるよう頼んでみてください』
そう言われて周囲を見渡す。ログハウスの精霊の多さと比べると、ポツンポツンと宙に浮いている光の玉たち。うちの山の中のほうが、種類も数も断然多い。一つ、二つと光の精霊の玉が薄っすら光っているのがわかる。
「わ、わかった……光の精霊さん、小さい灯り、お願いできる?」
お願いを言葉にしたとたん、『きゃーっ!』という嬉しそうな甲高い声が聞こえた。
私の掌に、ピンポン玉くらいの光の玉が出来てしまった。





