第144話 たわわに実る、ブルーベリー
なんとかガーデンフェンスを張り巡らせて、結界を張り終えた翌日は、ちょっとホッとしたせいで寝坊した。
「さつき~、ごはん~」
いつもは一階にあるベッド(いわゆる、猫や小型犬が使うようなペット用のベッド)で、私が起こすまで寝ているノワールが、珍しく下から飛んで起こしに来た。それくらい、寝ていたということだ。
「あー、ごめん、今起きるわ~」
Tシャツにグレーのジャージのパンツの私は、そのままの格好で階下に下りる。
「はぁ……今日は天気が良さそうね」
『うん、いいてんきだね』
「せっかくなんだもの、早いところ、洗濯とかしなきゃね」
『そのまえに、ごはん~』
「はいはい、わかったって」
それから私は午前中いっぱいかけて、家事をこなし、お昼を食べてようやく、山のメンテナンスに向かうことにした。
「まずは、果樹園を見ておくかな」
時期的に、もうブルーベリーや桑の実あたりは実が生っているはずだ。タブレットの『収納』にチャック付きのストックバック(Mサイズ)を箱ごとしまい込む。これ一袋にどれくらい詰め込めるか、ちょっと楽しみ。一応、冷凍もできるヤツだから、凍らせてヨーグルトとかと混ぜて潰して食べたりしたら、美味しそうだ。
腰にカウベルをかけて、タブレット入りの斜め掛けのバックを下げる。
「ノワール」
『おでかけ~?』
「うん、果樹園に行くけど、ノワールはどうする?」
『いくっ!』
ノワールが自力で飛ぶようになって、助かった。さすがに3、4才児相当の大きさのノワールを、この斜面で抱えて歩きたくはない。
「さてと、たくさん生ってるかなぁ……え゛」
ブルーベリーの木は、下りてきて左手の敷地の奥に、まとめて数本植えていたのだけれど……。
「ちょっと、実、生りすぎじゃない?」
あの濃いブルー(ネイビーブルーとでもいうんだろうか)の実が、たわわに実っている。枝が思いっきり下がってないか? そもそも一粒一粒が、やけにデカい。スーパーでも大粒なのを見るけど、それの倍くらいありそうだ。
そういえば、敷地や道沿いに植えた桜の木のさくらんぼも、艶々と赤くなりだしてはいたので、もうそろそろ収穫なのかもしれないが、それよりも、こっちのインパクトの方が半端ない。
「これ、さっさと収穫しないと、枝のほうが折れちゃうわよ」
慌てて『収納』からストックバックを取り出して、手前の方から採っていく。
「やだ、重っ。これ、本当にブルーベリーよね」
『むーん、あまずっぱい~』
いつのまにかノワールがつまみ食いをしていたらしい。両手で自分の頬っぺを抑えて、くるくるっと回って飛んでいる。
「やだ、洗わないで食べちゃったの?」
別に防虫剤とかの薬を散布しているわけではないから、大丈夫だとは思うものの、ちょっとだけ心配にはなる。
『おいしいよぉ~』
そんな私の心配をよそに、ノワールが上の方に飛んでいき、木の上に生っているのを採りだしてしまった。





