第140話 稲荷さんの『過剰戦力』と私の『過剰戦力』
軽トラに乗ってあちら側に行く間、稲荷さんに、第一異世界人との遭遇を伝えた。
「えぇぇっ! あんな所によく人がいましたね!」
「こっちこそ、びっくりですよ! 一応、ビャクヤが様子を見てくれているみたいなんですけど……そういえば、なんか知らない言葉で怒鳴られて」
「あっ」
「……もしかして、会話通じないとか?」
「あー! そうでした! 望月様はあちらから普通に移動してるだけなんで、異世界の言葉は通じないんでした!」
「……それって、こっちの村とか町に行っても、買い物できないんじゃ」
「ま、まぁ、そこは手振り身振りとか」
――海外かよっ!
いや、海外でも英語があれば、なんとかなるパターンもある。そんなに英語できないけど。
「えーと、えーと、うん! ちょっと、イグノス様に相談しておきますっ!」
「お願いしたら、どうにかなるんですかね?」
「うん、たぶん、大丈夫っ!(ヤバ―。絶対、イグノス様、忘れてるでしょ!)」
もうこれは稲荷さんを信じるしかない。
「それにしても、驚いたでしょう。あちらの人間は身体が大きいから」
「はい、それに……こう言ってはなんですけど、ボロボロな格好でちょっと……近寄りたくはないなぁと」
「うん?」
「なんていうんですか、昔の時代劇とかに出てきそうな、山賊みたいな感じで」
「ああ、なるほど(たぶん、山賊というか盗賊だと思うけど)」
「後で防犯グッズを買って帰ろうかなって思うんですよ」
「それは大切ですね。熊除けスプレー、持っていらっしゃいますよね? あと、まずは遭遇しないのが一番だと思いますよ? 結界とかって、どうしてます?」
「はい、一応、山の周囲をぐるりと囲もうかと」
「あ、だから、この道の両サイドに柵があったんですね」
稲荷さんがチラリと道の脇にあるガーデンフェンスに目を向けた。うんうん、と頷きながら、稲荷さんは言葉を続ける。
「ビャクヤたちも見て回ってくれるでしょうから、それほど心配はないと思いますが……大人数で来られたら厄介ですからね。早めに山全体を結界で囲ったほうがいいでしょうね」
「ですよねぇ」
「ノワールももうちょっと大きくなったら、かなりの戦力になるとは思うんですがねぇ」
「いやいや、あの子、ドラゴンですよね? どんな力があるかわかりませんけど……人に対して、過剰戦力なんじゃ」
「甘いっ、甘いですよ!」
「えっ」
「あちらに魔術が使える者がいたらどうするんですか。まぁ、望月様の結界は、そう簡単に破られるとは思いませんが、万が一、を考えたら、過剰くらいが丁度いいんです(そもそも、ホワイトウルフたちですら、一般人には猛獣として恐れられているんですけど)」
「……(私が思ってる『過剰』よりも、もっとやばいんじゃ)はぁ」
というか、そんなにヤバい世界に住んでるの? 私。
改めて、異世界、怖い、と思った私なのであった。





