第127話 風の精霊のお手伝い
ここ数日、大きく天気も崩れることもなく、のどかな日々が続いている。そのお陰か、植えた木々もすくすくと育っている。
ログハウスの敷地に植えていた桜の木には、サクランボの実も生り始めている。敷地の外の桜は、まだ小さいからか、サクランボは見当たらない。
そして梅の木にも実が生っている。緑の実が丸々としている。けっこう一粒が大きい。パッと見た感じ、数としては、20個にも満たないだろう。でも、小さな瓶であれば梅シロップくらいは作れそうだ。量があって可能であれば、梅干しも作ってみたいところだけど、あれはあれで手作業が多いと聞いた覚えがある。
しかし、思いのほか、木が大きく育ってしまって、脚立でもないと取れない場所にあるのが多い。
「うーん、高すぎて取れない。まいったなぁ」
『さつき、どうしたの?』
『どうしたの~?』
光の精霊と土の精霊の光の玉が、私の周りをふよふよ舞いながら聞いてくる。
「梅の実がね~」
『うめのみ~?』
「うん、高いところにあってとれないから、どうしようかなって」
またホームセンターで脚立を買ってくるしかないかな、と悩んでいたら。
『だったら、ぼくがおとしてあげるっ』
『わたしもっ!』
『え、ぼくも、ぼくもっ!』
どこからかいくつかの声が聞こえたかと思ったら、ビューンッと強い風が吹いた。
「うわっ!?」
『ちょっ!』
『うぎゃーっ!』
『やっほーい!』
バラバラバラッと、たくさんの葉とともに実が落ちてきた。地面には何も敷いていない状態だから、梅の実が思い切り地面に激突してる。
「や、やだっ! 傷ついちゃうじゃんっ!」
慌てて地面に落ちて転がるのを拾って、タブレットで『収納』していく。なんとか全部拾ったけれど、やっぱり、いくつかには傷がついてしまった。
「はぁ、まぁ、そんなに大きな傷とかにはなってないから、大丈夫かな……って、誰よっ! こんな風吹かせたのはっ!」
『かぜのやつだよっ!』
『ばかじゃんっ!』
『……だってだって!』
『だってだってだって!』
今まで気が付かなかったけど、緑色の光の玉がいくつかが、ぷるぷると震えながら集まって固まってる。
『だって! ぼくらだって、さつきのおてつだいしたかったんだもんっ!』
緑の光の玉の一つが、大きな声を上げた。
『それだって、げんどってもんがあるだろ』
『そうよ、そうよ』
『……むぅ、ごめん』
私じゃなくて他の精霊たちに叱られて、小さくなる緑の光の玉。なんか、見てるこっちがいじめてるみたい。
「まぁ、まぁ、まぁ。いいわよ。いいわよ。大きな傷がついた実はなかったし。それで、あなたは?」
『ぼくたち、かぜのせいれいっ!』
『もっとおてつだいしたかったの!』
「……もしかして、薪でお手伝いしてくれてた精霊?」
『そう!』
『そうよ!』
嬉しそうに答えると、私の周りを飛び回り始める。
……まぁ、かわいいから、いっか。
この後、まだ残っていた梅の実だけを取ってもらうことにした。今度は直接私の手元に運んでもらったのは言うまでもない。





