第126話 ハーブの確認と、浄化する苗木を植える
ハーブを植えて2、3日後。今日もノワールを背負って、立ち枯れの拠点に向かう。相変わらず、重い。背中の羽は飾りか! と言いたいところだが、それを生やしている本体が、なかなかに立派な体格だから、仕方がないのか。のんきにキャッキャと喜んでいる姿に、まったく、と思いつつも、笑みを浮かべる。
ひーはーと息をあげながら、再び立ち枯れの拠点にやってきた。
小屋の中に、ノワールを下ろして、周囲を見渡す。たいした日数が経っていないから、柵の中の様子はあまり変わらない。それは一方で、まだまだ精霊の力が弱いということを意味するんだろう。ログハウスの敷地だったら、木陰ができるくらいには育っているだろう。
実際、この敷地にいる精霊の数は多くないおかげで、視界は良好ではある。
敷地に植えた木々に水をやってから、柵の外に出てみる。私の後を追いかけてきたノワールは、敷地の出入り口で止まった。やっぱり、まだ臭いがキツイのかもしれない。
「おっ」
鉢植えのハーブも、『整地』した場所に植えたローズマリーも生き残っていた。やっぱり『整地』してあれば、他の植物もちゃんと育つのだろう。ただ、そのたびにKPが消費されてしまうのが痛いところだ。
地面にしっかり如雨露で水をやる。キラキラと日の光に輝いていて、ちょっとだけホッとする。
「やっぱり、土そのものに問題があるってことかな」
となると、浄化の効果のある苗木を植えたら、少しは変わるか。
「そもそもが、ちゃんと根付かないと駄目だよね」
水の流れの反対側、まだ何も植えていない場所に、『収納』で持ってきたびわ・はっさく・オレンジの苗木を取り出した。さすがログハウスの敷地で育てただけのことはある。すっかり、私の腰くらいの高さまで成長していた。
まずは、凸凹だった土地に、1m四方を『整地』した場所をいくつか作る。そこに『穴掘りで』少し深めに穴を掘って、苗木を植えた。
そもそも、この瘴気が土壌のどこまでに影響があるのか、『整地』によってどこまで綺麗にできているのか、予想がつかない。
「でも、やらないよりはね」
植え終えた苗木に、水をやる。ゆっくりと浸み込んでいく様子に「ちゃんと育ってね」と声をかける。
『だいじょうぶよ~』
『わたしたちがめんどうみるし~』
「そう? よろしくね?」
小さな光の玉たちが、苗木の周りを飛び回る。さっきよりも数が増えている気がする。
『さつき、ごはん!』
相変わらず敷地からは出てこないノワール。あの子が気にせずに出てこられるようになるまで、どれくらいかかるんだろうか。飛べるようになるほうが早かったりして。
「あいよ~」
凸凹の地面を踏みしめながら、私は拠点の敷地へと戻るのであった。





