第125話 再び、ハーブを植えてみる
ノワールを小屋の中に下ろす。初めての場所だから、ノワールも小屋の中に興味津々。そんなに広い場所でもないから、トテトテと中を歩き回っている。私は、ノワールをそのままに、敷地の中を見回す。
ラベンダーやローリエ、ユーカリは枯れてはいない。成長速度はやっぱりログハウスの敷地程ではない。でも、枯れてないだけマシだ。タブレットから『収納』していた如雨露を取り出し、水やりをする。こっちにももう一つ置いておくべきかも。
「それよりも問題はあっちよね」
私は如雨露をしまうと、敷地の外に向かう。
柵の外は、相変わらず草一つ生えていない。人工池から流れ出る水は、途中までいって地下に浸み込んでしまっているようだ。もしかしたら、もっと水量があれば違ったのかもしれないけれど、水の精霊に抑えてもらっているから、こんなものなのかもしれない。
「さてと、まずは鉢入りのやつを植えてみるかな」
『収納』から取り出したのは、素焼きの鉢に植え替えたハーブたち。
水の流れを中心にして右側に、ミント、オレガノ、タイム、レモンバーム、ローズマリーを1m間隔で穴を掘って、鉢ごと植えてみた。
「そして……ここを『整地』」
鉢植えから少しだけ離してから、1m四方を『整地』してみた。その真ん中に、ローズマリーの苗を植えてみる。これで、ローズマリーがそのまま育つかどうか。瘴気の影響力がどう変わるのか。
「そんで、あっち側にびわたちを植えたいところだけど、もうちょっと育ってからにするか」
若すぎて、すぐに枯れる可能性も捨てきれない。もう少し育ってから挑戦してみよう。
『さつき~』
拠点の敷地の中からノワールの呼ぶ声がした。
「あいよ~」
振り返って見てみると、敷地の出入り口の所で止まっている。
「どうした~?」
『む~。くさい~!』
「うん?」
『そっち、くさくて、や~』
ジタバタと足踏みしている姿は、コミカルでなんとも笑いを誘うのだが、やっぱり、チビドラゴンにも、この瘴気の跡は臭いと感じるようだ。
両手をあげて、抱っこを求める姿に、私はクスクス笑いながら、ノワールの元へと戻る。抱き上げると、泥だらけの足の裏をはたく。土がサラサラなおかげで、すぐに落ちてくれたのは、助かった。
「はいはい。そんなに臭いの?」
『うん。なかではかんじなかったけど、ここまでくるとくさい~』
やっぱり、聖獣とかそういったモノたちからすると、何かしら感じ取れるものなのかもしれない。先々、ノワールやビャクヤたちを連れてくる機会が増える可能性も考えると、早いところ、この瘴気の臭いをなんとかしないといけないかも。
「それには、びわとはっさく、オレンジの苗の浄化の力次第ってところなんだろうけど」
まずは早いところ、苗に成長してもらわないことには、と思ったのであった。





