第122話 精霊たちと瘴気の臭い
精霊の声が聞こえるようになったことの利点として、相互理解が進んだことが、一番だろう。独り言にならないのは、よかったと思う。
やはり、この山の土地柄なのか、土の精霊が一番多くいるようで、畑や木々の周辺にたくさんいるのが見えるようになった。一番多いのは、やっぱりログハウスの敷地の中。次に道沿いの植樹した木々の周辺にも多くの光が見えた。
その次が光の精霊。ガーデンライトもお気に入りのようなのだが、意外にもソーラーパネルにもへばりついている子らもいて、びっくり。
そして水の精霊は案の定、人工池の周辺に密集していた。排水口から流れ落ちる水でできた川にも多くの精霊がいた。
他に風の精霊がいるらしいんだけれど、この場所にはいないらしい。確かに、この場所は強い風とかは吹いていないし、もっと高い山とかになら、いるのかもしれない。
それにしても、敷地の中の精霊たちの多いこと。結界の中にうじゃうじゃいるのが、外から見てもわかるくらい。
――これ、ヤバいだろ。
この子らのおかげで、KPの自然増加があるんだろうけど、もしかして、手持無沙汰な精霊もいるんじゃない? なんて思った。
とりあえず、私が『整地』したところにも多くの精霊の姿があることからも、できるだけ山の中をメンテナンスしていく必要があるんだろうな、と、ちょっと思った。
立ち枯れの拠点への道は、あと少しでつながる。そんな私を応援するのが精霊たちである。
『がんばれ~』
『もうすこし~』
『あとちょっと、あとちょっと』
実際、草刈りしつつ足元を『整地』するのは思った以上に面倒。しかし、これを作らないと、立ち枯れの拠点まで自力では行けないのだから、仕方がない。
「お? もしかして、抜けたかな」
拠点の裏手に出たようで、柵と同時に、出入り口も見えた。
「やったぁ~!」
私は大喜びだったんだけれど、精霊たちは先ほどまでのテンションがいきなり鳴りを潜めた。特に土の精霊たちが、低空飛行。
「うん? どうした?」
『む~、しょうきのにおいがきつい~』
『まだのこってる~』
「え、そんな匂いがある?」
私もくんくんっと匂いを嗅いでみるけれど、まったく感じない。ビャクヤたちからはそれらしいことは言われてなかったから、もしかして、精霊特有なのだろうか。
「さっきまでは平気だったじゃない?」
『さつきといっしょだと、きにならなかった~』
『でも、ここまでくるときつい~』
「そうなのね。うーん、どうしたらその瘴気の臭いが消えるのかな」
『さつきがいれば、すこしはましなの~』
『さつきのもってくるこたちがいると、すこしはらくなの~』
うん? もしかして、私が買い込んできている植物たちのことだろうか。
「とりあえず、中に入ろう」
私は草刈り機を『収納』すると、柵の中へと入った。





