第121話 精霊の声が聞こえた! 見えた!
今日も私は草刈り&道づくりに勤しんでいる。
今作っているのは、立ち枯れの拠点(ほぼ名称確定)に向かう道だ。毎回、ビャクヤの背を借りて山頂経由の移動は、怖いし、申し訳ない。特に今はチビドラゴン、ノワールのせいで、接触すら難しい。
そのノワールは、今はお留守番という名のお昼寝タイム。さすがに、あれを背負って草刈りは遠慮したい。従魔になったおかげで、私との会話もなんとか通じるようになったので、比較的言うことを聞いてくれるようになったのは、助かった。
それと。
『くさかり、くさかり、たのしいなぁ~』
『つちをならして~』
『みちをつくって~』
『やまをひらいて~』
……最近、幻聴が聞こえるようになった。
小さな子供のような声が、聞こえるのだ。
最初の頃こそ、コソコソっと何か聞こえる? 程度だったのが、ここのところ、けっこうはっきりと聞こえるようになってきている。
そして、時々、小さな光の玉が浮いているように見えるようになってきた。黄色や白や青の光の玉。
何度か目をこすってみても見える。
特に顕著なのが、ログハウスの敷地の中。少し前までは、うすぼんやりとしていたのだけれど、今ではかなりしっかり見えているような気がする。
今、この草刈り最中の騒音の中でも、聞こえてくるし、周りをふわふわ移動する光が目に入ってくるものだから。
「はぁ……目と耳の病気かしら……」
『さつき、びょうき?』
『さつきが、びょうき?』
『なんだって!?』
ぽそっと呟いた私の声に、すぐさま反応するいくつもの幻聴。
いや、もう、これはきっと。
「もしかして、精霊?」
『あたり~!』
『せいか~い!』
『ねぇ、びょうきはぁ?』
わいわい、ぎゃぁぎゃぁ、キャッキャ……
……騒々しさが、倍増……いや倍増どころではない。
「う、うるさぁぁぁぁいっ」
目をつぶって、思い切り叫んだ私。再び目を開いたら。
「わぁぁぁっ!」
目の前が光で溢れていて、前が見えないっ。
「なに、なに、これ、やだ、なにこれぇぇぇぇっ」
『散らばれっ!』
いつの間に来たのか、突然、ビャクヤの怒鳴り声が聞こえた。それと同時に、一気に光が離れていく。
『五月様、大丈夫ですか』
「び、びゃくやぁぁぁ」
思わず、ビャクヤに抱きつく。
『お前ら、もう少し、加減というものを考えろっ』
『だってぇ~』
『なぁ?』
『やっと、さつきがきがついてくれたんだよぉ?』
『うれしくなっちゃって』
『なぁ?』
『なぁ?』
『……それでもだ!』
ビャクヤが精霊と会話をしている。私にはただの色とりどりの光の玉にしか見えないけれど、ふやふや浮いているそれが、ビャクヤに絡んでいるように見えるから不思議だ。
「や、やっぱり、それって精霊なのよね?」
『そうです。やっと見えるようになられましたか』
「……うん、見えちゃうし、聞こえちゃう」
『わーい』
『わーい』
『わーい』
わーい、じゃないわいっ!
あんな風に目の前がチカチカと光でいっぱいになってたら、何も出来ない。もしかして、ログハウスの敷地も実はあれぐらいいたのだろうか。
そう考えたら、ちょっとだけ、ゾッとした。
そりゃぁ、分散させて欲しいって言うわけだよ。
「マジで、もっと、精霊の居つく場所、作らないと駄目なんじゃ……」
私が遠い目になったのは、仕方がないと思う。





