第116話 立ち枯れの場所に拠点を作る
次の日、朝から立ち枯れの場所へと向かう。今回は、ビャクヤの背中にしがみついても、声を出さなかった。けして慣れたわけではないが、これから先をどうするか、考えてたら、あっという間に問題の場所に着いてしまった。
「……ここまで来る道も考えなきゃね」
毎回、ビャクヤ頼みというわけにもいかないだろうし。せっかくなら、バイクで通えるような道があったほうがいい。『ヒロゲルクン』の地図を見ると、トンネル側の道からなら谷の方へと抜けられそうだった。今回も排水口の時と同じように、獣道もないから、自力で作るしかないけど。
今日はここでキャンプの予定。念のため立ち枯れで出来た空地の周辺を柵で囲っていく。だいたい広さでいえば、谷に沿った形になるから、ログハウスの敷地よりも少し細長い感じになった。
一応、トンネル側の道に繋がりそうな場所だけ開けて、柵を作って置く。念のため、タブレットで『鑑定』してみたら、これにも結界の機能がついていた。ありがたや~。
ちなみに、この柵に使っている木は、立ち枯れの木ではない。ちゃんと、立ち枯れの木は柵用には選択されないようになっているようだ。『収納』で見てみると、『廃棄』一択らしい。
そして、トンネル側の出入り口そばに、ドア付きの小屋も設置。テントを張ってもよかったんだけど、万が一、魔物が来た時とかに逃げ込む場所と思ったら、テントじゃ心もとないと思ったのだ。結界の機能のある柵でも、何があるかわからないし。
最後に大事な簡易トイレ。ログハウスの敷地から『収納』して持ってきた。お風呂は我慢できても、トイレは無理です!
拠点が出来てからは、ほぼ無言で『伐採』『収納』を繰り返す。
切り株を『収納』してしまうせいで、地面は凸凹状態。これは後で『整地』しなきゃだろう。
「はぁ、とりあえず、ここまでっと」
午前中のほとんどを拠点づくりに使ってしまったので、立ち枯れの後始末はほとんど進まなかった。まぁ、これは仕方がない。
ビャクヤは周辺を見回りに行っている。なぜなら、ハクとユキが後から追いかけてきたのだ。彼らは『伐採』している私の後をついてきては、あちこち飛び跳ねている。おかげで、獣や魔物のことを気にしないで済むから、ありがたい。
小屋に戻ると『収納』からリュックを取り出す。これにキャンプ道具一式をいれてあるのだ。ミニテーブルに折り畳み椅子。一応、焚火の準備もしておく。今日のお昼はおにぎり。中身は梅干し。おかずには卵焼きとベーコン。
『さつき~』
『さつき~』
ハクとユキが目の前でお座りしている。絶対、ベーコンを分けてほしいとかってヤツだ。
「わかってるよぉ」
一応、ビャクヤへのおやつのつもりもあって、今日は『収納』に猪肉の真空パックをいくつか入れてきていたのだ。パックから出したら、美味しそうに食べる2匹。
喜んでもらえて何よりだわ。





