第115話 立ち枯れの場所に行ってみる
「全然、緑がないね」
山頂から見える景色に、呆然とした声が、思わず零れる。
細長くぽっかりと空いた、裸の山肌。周囲の木々は春らしく緑が芽吹いているというのに、4カ月近く経っても、雑草すら生えていないし、枯れた木々はそのままだ。
「あれが、ブラックヴァイパーの影響の跡なんだね」
『ええ。瘴気のせいであの周辺は新たな芽吹きはないのです』
「そういえば、何十年とか何百年とか、前に言ってたっけ」
でも、私の山であのままっていうのは、なんか悔しい。
やっぱり、山には緑がなくっちゃ。
「ねぇ、あれ、放置してたらそのままってだけで、私が『整地』とかしたら、生えて来たりするかなぁ」
『……どうでしょう(でも、精霊の愛し子である五月様なら、あるいは……)』
「……よし。とりあえず、下りてみよう。あ、まだその瘴気とかって私たちに影響があったりとかする?」
『いえ、(五月様がいらっしゃるなら)大丈夫でしょう』
「じゃあ、お願い」
私とビャクヤは、一気に山の斜面を駆け下りる。さっきまで、ギャーギャー言ってた私だけど、今は無言になってしまう。
実際、立ち枯れした木々の場所に行ってみると、思った以上に広範囲だったのがわかる。山頂から見えたのは、どうも一部だけだったようだ。
「もしかして、あれ、ずっと続いてるってことよね」
『そうです……ヤツがどこから来たかは想像の範囲ですが、移動した場所がずっとこの状態になっていると思われます』
「……酷いね」
立ち枯れしているのは、ちょうど谷にあたる場所。うちの山の部分がかなり多く立ち枯れしてはいるけれど、反対側の山の斜面にも影響が出ているようだ(こっちの山は、うちの山より、少し低め)。
私の立っている場所から、かなり先まで立ち枯れしている。私はタブレットを取り出し、『ヒロゲルクン』の地図を見る。当然、対面の斜面は範囲外。
「それでも、見えるところがこんなんじゃ、嫌よね」
私は地図を確認して、まずは自分の山の範囲で枯れている所を片づけることにする。立ち枯れしている木々をどんどん『伐採』し、切り株を『収納』。それを繰り返していく。
「やだ、もう日が暮れてきた」
谷間にあるから、暗くなるのも早い。
「もう1回、いや、2回くらい来ないと駄目かな」
『そうですね』
地図を見ると、まだ半分も進んでいないようだ。
「……毎回往復するのも面倒だし……せっかく整地するんだったら、ここでも何か育てられないかしら」
『よろしいのではないですか。(愛し子の)五月様が植えたものでしたら、精霊たちも手伝いましょう』
「そうだった。そしたら、こっちにも精霊が分散してくれるわよね」
『はい(そうすれば、こちらの木々も活性化するだろうしな)』
せっかくなら、こっちの拠点みたいなのもあってもいいかもしれない。
さすがにログハウス並みのは材料が足りないだろうけれど、小さな小屋くらいなら、あってもいいかな、と、ちょっと思った。





