第110話 KPの使い方に悩み、古龍の卵に怒る
二次会から戻ってきた翌日は、さすがに疲れてダラダラと過ごしたけれど、それ以降は、地道に敷地周りのお手入れに勤しんだ。
まずは、中途半端になっていたガーデンライトの設置。
買ってきてからトンネル側の道に沿って刺していったんだけれど、草刈りをしながらだったので、あんまり進んでいなかったのだ。結局、全部やるのに、4日ほどかかってしまった。
この道沿いにも何かしらの木を植えようかとも思ったのだけれど、その度にKPが消費されるのを思い出して、我慢した。『収納』のバージョンアップもだけれど、地図アプリも欲しいと思ってしまったので、なんとかKPを貯める方向で頑張ることにしたのだ。
ありがたいことに、精霊たちによる自然増加や、時々ビャクヤたちが狩ってくる魔物の残骸などもあって、ちょこちょこ貯まっている。私一人だったら無謀な値でも、そのうちいけるんじゃないか、と思えたのだ。
「しかし、なかなか増えない」
ガーデンライトの設置を終えた4日目の午後、ログハウスの前で折り畳み椅子に座り、休憩している私。お茶にこの前買ってきた煎餅をミニテーブルに置きつつ、タブレットを確認中。
KPを貯めるために、今の私が自力で出来るのは、周辺の草刈りくらい。タブレットを使えば使うほど消費するわけで。
「でも、考えてみれば、『収納』のMAXの機能を考えてみれば、そう簡単にいくわけないわよねぇ……」
時間停止の上に、容量の収納制限なし。普通に考えたって、ありえない機能なんだ。
そう思ったら、頭が切り替わった。
あんまり『収納』に拘らずに、まずは魔道コンロ購入への道を模索すべきだ!
「この前買った、カセットコンロ用のガスボンベ、そろそろ在庫が怪しいもんなぁ」
また買いに行けばいいことではあるけれど、家にいて、毎回カセットコンロを使う、というのがいまだに、違和感があるのだ。それだけ、設置式のガスコンロに慣れていたっていうことなんだろうけど。
そもそも、魔道コンロというもののイメージがわかない。便利そう、というだけで、実際はカセットコンロと大差ないものだったりする可能性だってある。
「それを確認しに、こっちの町に行ってみないことには、わかんないよねぇ」
タブレットから目を離し、背後にあるログハウスに目を向ける。
二度あることは三度ある。稲荷さんの時と、買い出しの時と、二次会の時。こう続けば、古龍の卵に何かあると思うわけで、ついつい、二次会から帰ってきた日に、思わず古龍の卵に文句を言った。
『毎回、雪を降らせるのは、あなたなの!? それとも古龍!? 今日は雪のせいで戻れなくなりそうだったじゃないっ!』
文句を言ったところで、この卵がわかるわけではないだろうけど、言わずにはいられなかった。
……いや、胎教というのがあるくらいだし、卵の中でも理解している可能性もあるかもしれない。
今度、遠出をする時は、卵に一声かけてみて様子をみよう、と思ったのであった。
* * * * *
卵を通じて怒られた古龍は、いじけて洞窟の奥の方へと潜り込んでいた。
せっかく、卵によって五月の気配を感じられるようになったというのに、突然、それがぷつりと感じなくなることが続いたのだ。それも丸一日ない時など、また再び、五月がいなくなってしまったのかと、不安な気持ちが抑えられなかった。
その上、卵を通じて、五月の怒りが伝わってきたのだ。
「そんなに怒らなくてもいいではないか……」
卵は意外と敏感だ。
言葉はわからなくても、その感情を察知して、そのまま古龍に伝えてしまう。
「ううう、早く、サツキに会いたいのぉ」
古龍が洞窟から出られないのは、いまだに魔力のコントロールが上手くいかないせいだ。稲荷に言われてから、抑え込もうとしているのだが、思っていた以上に抑えられていない。
実は、長い間眠りにつきつつも、その間の成長とともに魔力が増大してしまっていたのだ。
古龍は五月に会うために、洞窟の中で魔力をコントロールしようと必死になっているけれど、そんなことは五月は知るよしもない。





