第102話 水の流れの先
シロタエの背に乗り、ゆっくりと森の中を歩いていく。所々、木の根元あたりに雪が残っている。すでに平坦な地になっているから、森、でいいんだろう。
タブレットで『ヒロゲルクン』の地図で確認しようとしたら、ここはすでに私の山の範囲ではないようで、私の位置が把握できなくなっている。
「この辺も購入したら、この地図に反映されるのかしら」
これがわかるのは、イグノス様か稲荷さんだろう。むしろ、地図専用のアプリがあったりしないだろうか。あれば、欲しい。
キャンプ場に行った時にでも聞いてみよう。
不意に、目の前が開けた。
「うわ~、思ってたのよりも大きな川だわ」
敷地から流れ出ている水に沿って歩いてきたけれど、辿り着いたのは、思いのほか川幅があった。4,5メートルはありそう。山頂から見えた細い川は、これのことだろう。
川の向こう岸には木々はなく、荒れ果てた平野が広がっている。見渡す限りの平野に、人家は見当たらない。向こう岸に渡れそうな橋も見えない。
「……この辺って、人、住んでないの?」
『そうですね。たまに冒険者が魔物の討伐に来るのを見かけますが、人の住む場所は、ここからだと、もっと西、あるいは北の方でしょうか』
「そっか……道らしいのもないもんね」
シロタエの話からも、村だか町だかはあるようだ。私が草刈りして進んでいる道は、もっと北側に進んでいるらしいので、むしろ道がある方が、人家に近いのかもしれない。
「あ、魚が跳ねた」
綺麗な水なので、岸のそばは水底まで見える。さすがに魚が跳ねた辺りは、かなり深そうだけど。あれは食べられる魚なんだろうか。ちょっとだけ気になる。
「そういえば、稲荷さんが盗賊もいるって言ってたけど」
『おりますけど、この周辺は(すでに追い出してますし)、私たちがおりますから(住みつくことはないでしょう)、ご安心を』
「そうなの? 助かる~。その手の人達と遭遇しないにこしたことないからさぁ」
でも、今度、念のため、防犯グッズを買っておいたほうがいいかもしれない。
私はシロタエに乗りながら、しばらく川の下流の方へと歩いていく。この川は山の端にある森の周辺をなぞるように流れていたが、そろそろ森が切れるようだ。
「思いのほか、広かったわ。私一人じゃ、ここまで来れなかったと思う。ありがとうね」
『いえいえ……そのうち、この辺りも五月様の持ち物にされては?』
「やだぁ、そんなにお金ないよ~」
『お金、ですか?』
「そうそう、あの山だって、稲荷さんから買ったんだし……だいたい、この辺りだって稲荷さんの持ち物とは限らないんじゃ」
町や村があれば、この土地を管轄している組織か人がいてもおかしくはないはず。
『……人のことは、よくわかりません。私たちの縄張り外のことになりますので……』
そりゃそうか。
こうして会話しているせいで、人のように扱ってたわ。
「うん、そうよね。その辺のことは稲荷さんに聞いてみるよ。一旦、家に帰ろうか」
『はい』
私たちはログハウスのある山へと戻ることにした。





