第101話 山の斜面は、なかなか厳しい
翌日、まずは人工池の大きさを変えてみた。
今までのは直径1mくらいの小さな人工池だったけれど、倍くらいの2mに変えて、もう少し深くしてみた。これだったら、ビャクヤとシロタエ、2匹が並んでもなんとかなるだろうか。
「あとは、柵の向こう側がどうなってるかだけど……なんか排水口のあたりの木が立派になっているのは気のせいかなぁ……」
山の上の方の木に比べて、下側の柵越しに見えるのが、幹も太くなっているような。湧き水側の出入り口からぐるりと柵の外をのぞいてみる。
「……うん、やっぱり、ちょっとだけ大きい木が増えてるかな」
『だいぶ魔力を蓄えているようですね』
「え」
今日もシロタエが私と一緒だ。
背後から、同じように覗いてみている。
『周囲の木よりもだいぶ太いでしょう? たくさんの土の精霊があの敷地にいるせいもあって、水の精霊の魔力の他に、土の養分も流れているんだと思います』
塩ビの排水管を使っているものの、元となる人工池から土の養分が流れているのかもしれない。シロタエは、このまま放っておくと魔物化するかも、なんて恐ろしいことを言いだした。
「え、え、え、木も魔物になるの!?」
『そうですね、トレントなどが有名でしょうか』
……やだ。聞いたことあるわ。
「どうしよう、とりあえず、『伐採』しておこうかな」
しかし、ちょっと斜面がキツイ。タブレット片手に『伐採』しようにも、足元が不安定になりそうだ。それ以上に、無理に歩いて行ったら、滑り落ちそうだ。
「うーん、ここ、『伐採』して『整地』したら、歩けるようになるかな」
『私の背に乗ってくだされば、近くまで行けますよ』
「ごめんね、お願い」
ザザッと軽快に斜面を走るシロタエ。さすがだ。
少し進むだけで、水が流れる音が聞こえてくる。私はシロタエの背中に乗りながらタブレットを手に、特に太いのを目安にいくつか『伐採』していくと、目の前に水が流れ落ちているのが見えてきた。
「あ、あった」
思っていたよりも、かなり水量が多い。そして、この水の流れに沿って生える木が軒並みデカい。こうも成長速度が早いなら、薪用の森林地域決定かも。近場にあるのは何よりも助かる。やっぱり、こっちに下る道も作っておきたいかもしれない。
「まずは、ある程度『伐採』しておかなきゃね」
水の流れに沿って進んでみると、敷地に近いところほど、木の成長度合いが早いようだ。
傾斜が緩くなった辺りから、水辺の木々は周辺のものと大差がないようだ。そして、水の流れている幅が広がり、小川といっていいくらいになっている。
シロタエから降りて、周辺を見回し、上を見上げる。
「けっこう下りてきたわね」
周辺の木々の隙間から山の頂上が見えるけれど、ログハウスから見るのに比べてかなり遠く感じる。
『もう少し下りれば、平地を流れる川へと合流します』
「え、本当!?」
山頂から見下ろした時に見た以来なので、ちょっと気になる。
「シロタエ、見に行くのに付き合ってくれる?」
『ええ、構いませんよ』
私は、こちらに来て初めて、山の外へと出ることになった。





