第98話 草刈りと山道
結局、角うさぎの肉は、ブラウンシチューにして美味しくいただいた。じっくり煮込んだおかげで、思いのほか、肉がホロホロになって、まさにほっぺが落ちるとはこのことだなぁ、なんて、しみじみと思ったくらいだった。
毛皮と角、魔石以外はどうしようもないので『廃棄』。毛皮はさすがになめし方も知らないので『売却』。思ったほど高くなかったのは、毛皮がボロボロになっていたせいだろう。
シロタエ以外は、毎日獲物を狩りに出かけている。その代わり、シロタエは周囲を警戒しながら私の後をついてきているようだ。
シロタエに聞いたところ、意外にも角うさぎは肉食らしく、攻撃するときに角を出してくるらしい。それを知らない私が遭遇してたら、簡単に攻撃されて食われてしまうかもしれない。
うさぎの肉食、全然想像ができないけど。そんな話を聞いてしまってから、角うさぎ……というか魔物に対する不安感が出てきたので、シロタエがいてくれるのは、だいぶ助かる。
今日も草刈りに精を出している私。
草刈機の高音は、シロタエでもあまり聞きたい音ではないようで、少し離れたところで見守ってくれている。
「えーと、今はどれくらい進んだかな」
タブレットを手に取り、『ヒロゲルクン』の地図で確認。
「うーん、あと4分の1くらい? 意外に、まだ距離があるのね」
それでも山の入口まで行けば、あちら側からの道ともぶつかるから、もう少し短いかもしれない。スタート時では、4日もあればいける、いける、なんて軽いことを言ってたのに、なんだかんだとやることやってると、こっちに手が回っていない。まぁ、仕方がない。
実は、ログハウスのある敷地からここまで、歩くと20分近くかかったりする。草刈機は『収納』に入れたままにして、タブレットだけ肩掛けバッグに入れて持ってくるだけだから、それほど荷物にはならないものの、歩いてくるのは、なかなかの運動にはなる。
車で来ることもできるけれど、ここまでの距離もそうだけれど、少し蛇行している状態なのもあって、バックで戻るのは無理。そこまで私も運転に自信はない。
それに、今まで単純に草刈りと伐採をしてきただけで、地面の状態があまりよくない。湧き水あたりまでの道はビャクヤたちも使っていて、そこそこ踏み固められている。だけど新しく草刈りされているところは、そうでもなくて、そんな道を車で走るのは、ちょっと不安。
中古の軽自動車とはいえ、まだ買ってそれほど経っていないし、それも、普通に街中を走るようなタイプ。舗装した道路を走るにはいいけれど、こういう山道には向いてないし、こんな道じゃ、車体も、石だの枝などで傷が付きそうだ。こんな道を走るなら、いわゆる4WDみたいなもののほうがいいのかもしれない。あとは軽トラックとか?
「だからって、新しい車を買う余裕はないもんなぁ……舗装でもできたら、少しはマシになるんだろうけど」
目の前の刈られた草の後を見て、思わずため息が出る。





