第97話 うさぎなのに魔物?
「『つのうさぎ』のつのって、角のことかな」
私は床にビニールシートを敷いて、そこにうさぎを並べた。しかし、見た目は、本当に茶色い毛のうさぎにしか見えない。角なんかないし。
そして、見事にボロボロ。食べる部位があるのか心配。いや、そもそも、解体なんてやったことないし。
「一応、『鑑定』しておこうか」
『角うさぎ:うさぎの魔物。攻撃時に額から角を生やす。食用』
「……うん?」
目を擦り、タブレットの画面をもう一度見る。
『角うさぎ:うさぎの魔物。攻撃時に額から角を生やす。食用』
角の生えるうさぎっていうのも気になるけれど、むしろ引っかかるのは『魔物』。
――うさぎなのに『魔物』?
パッと見ただけじゃ、本当にうさぎにしか見えないのに!
というか、ホワイトウルフとブラックヴァイパーの次に見ることになった魔物が、うさぎとは。いや、『鑑定』しなきゃ、ただのうさぎとしか思わなかっただろう。
それに、稲荷さんから猪肉をもらったりしてたから、ジビエには抵抗はないし、むしろ美味しいとは思う。
しかし、一応、食用とはなっているものの、『魔物』となると躊躇してしまう。
「い、一応、食用ってあるから食べられるんだろうけど……そもそも私、解体できないし……『収納』して『売却』かなぁ」
後で美味しかったか聞かれそうなので、ちょっとばかり胸が痛いが。
私は角うさぎを『収納』して『売却』しようとしたのだが、そこで『分解』メニューも使えるのに気が付いた。
――この『分解』、もしかして解体と同じ使い方ってできるんじゃ?
ホワイトウルフの毛の汚れを落としたくらいだ。皮と肉、くらいに分けられてもおかしくない、はず!
というか、できてくれ!
「よし、『分解』っと……お、おおお……」
皮と肉(可食部)、その他に血や骨、内臓だのに分かれたのだが……。
「角と……魔石」
あちらで見たことがないうさぎの角に、魔石なんていうのも出てきた。
気になったので、角と魔石を取り出して見る。
角はあのうさぎの頭から生えるくらいなので、親指くらいかと思ったら、私の掌よりも長く、指2本分くらいの太さがあった。思いのほか大きい。どうやって、あの頭の中に入ってたのか、不思議だ。
そして気になるのは『魔石』だ。
こっちは身体のサイズ通り、だいぶ小さい。小指の爪ほどもない。むしろ、ただの薄い赤い色のついた石と言われてもわからないだろう。
「でも、けっこう綺麗な色してるのね」
窓から差し込む光にすかしてみる。
薄い赤がきれいなシーグラスと言われても、わからないかも。
「せっかくきれいなんだし、窓際にでも飾っておこうかな。今のところ、使い道、わかんないし」
私はキャンプ用に持ってきていたステンレスの皿の中でも一番小さいヤツの上に、魔石をころんと転がすと、窓際に置いた。
「うん、綺麗ね」
魔石から透けたような赤い光が、皿に映っているのを、私はジッと見つめるのであった。





