第915話 五月、体調を崩す
久しぶりに山のログハウスに戻ってきた私たち。
昨夜は食事の準備をする気力がわかなかった私。
それを察したのか、エイデンが土産だといって、南の特産品らしいトゲトゲの抱えるくらいの果物と、屋台で美味かったという大きな肉がたくさんささった串を数本渡された。
果物は見た目から、まさかドリアン!? とか思ったけれど、甘ったるい匂いだったし、匂いの通り甘い果物でホッとした。
肉のほうも甘いタレが使われていて、独特なスパイシーな感じで、美味しかったんだけど、ちょっと胃もたれした感じになってしまった。
そして翌朝。
長い間、家以外で生活してきたせいか、疲れがどっと出たようで、なかなかベッドから出られないでいる私。
――買い出しに行きたいんだけどなぁ。
ベッドの中でゴロゴロしていると、寝室のドアをコンコンコンとノックする音。
『五月、起きた~?』
マリンの声だ。
「あー、ごめん。起きる、起きる」
身体のだるさを感じながらも、なんとか起き上がり、パジャマからトレーナーにジーンズの格好に着替える。
ドアを開けると、心配そうな顔のマリンが立っていた。
「大丈夫?」
「お待たせ。朝ごはんだよね」
なんとか笑みを浮かべて、階段を降りていく。
「ノワールは?」
「エイデンと一緒に隣の離れに行ってる」
「そっか」
私はログハウスのキッチンに久しぶりに立って、何を作ろうかと考える。正直、身体のだるさで何も作る気力がわかないのだ。
玄関先のコート掛けに下げておいた斜めがけのバッグ。そこに入れっぱなしのタブレットを取り出して『収納』をチェック。
ストックしてある作り置きを朝食に、と思ったのだけれど、使い切ってしまって何もない。いや、素材となる野菜や肉はある。ただ調理してある物がないだけだ。
「……米、炊くか」
シンク下の扉を開き、土鍋を取り出す。大きな土鍋で多めに米を炊く。どうせなら、これでおにぎりを作るのもいいだろう。
米を洗い、少しの間、水につけておく。
あとは目玉焼きに、ノリと漬物でもあればいいだろうか。
「マリン、卵とってきてくれる?」
「うん、いいよ!」
玄関ドアを開けて、元気よく飛び出すマリン。
ログハウスを不在にしている間、卵は孤児院の子たちが集めてくれるようにお願いしてあった。皆で食べちゃって、とも言っておいたのだ。
私は他に何かあるかなと、キッチンのストックをチェックする。インスタントの味噌汁が山ほど残っていた。長期保存できるからと、『収納』にはしまっておかなかった物だ。
「五月~! 卵、いっぱい~!」
玄関から入ってきたのはマリンだけではなく、ノワールとエイデンまで。彼らの腕の中には、確かにたくさんの卵が抱えられていた。
「おはよう~」
「おはよう。五月、体調は大丈夫か?」
私が声をかけると、エイデンが心配そうな顔でキッチンへと近寄ってきた。
「ん~、イマイチではあるかな」
そんなにわかりやすいのだろうか、と思わず、自分の顔に手をあてる。
「無理して食事の用意をするな。ノワール、ちょっと村までいって誰か呼んで来い」
「わかった!」
「え、いや、大丈夫だよ?」
「五月、顔色があんまりよくないよ?」
「え」
マリンにまで言われてしまい、私はエイデンを見上げる。真剣な顔でコクリと頷かれてしまった。
――あー、ちょっとダメかも。
急にくらっとした私は、すとんとしゃがみ込んでしまった。





