第95話 『鑑定』しまくって、驚いた
吹雪は止んだけれど、積もっている雪は変わらずだ。柵の上まで積もっている様子に、こっちに落ちてこない不思議に、感心する私。
湧き水側の道も完全に雪に埋もれているのだけれど、ビャクヤたちが踏みつけたり、風の魔法で吹き上げたりして、少しだけ減っている。しかし、そこを歩くには、私が持っている踝上程度の長靴じゃ無理。魚釣りとかに履いていくような膝上くらいのものじゃないと、完全に埋没すると思う。
まだ寒いけれど、日がさすようになったので、早いところ溶けてくれるのを祈るのみだ。
その間、私はタブレットで色々と『鑑定』してみて、その結果に、思わず唖然となった私。
まず、『タテルクン』を使って建てたモノには、軒並み『結界機能』が付いていたのだ。もしかして、ハクたちがログハウスに入ってこれなかったのは、玄関マットのせいだけではなかったのかもしれない。
あと、物置になっている小屋や厩舎には、ホワイトウルフたちは問題なく入っている。ログハウスとの違いは……私が入るように言ったからだろうか?
そして、あちらで買ってきたリンゴの木は、残念ながら、ただのリンゴの木と表示されたけれど、梅と柿、桜には、『結界機能』の他に、なぜか『浄化機能』なるものまで付いている。
なぜに『浄化機能』?
……私が食べたヤツだから?
なんだか微妙な気分になったので、他の物を『鑑定』してみる。
この土地で育てた野菜類。今は畑にはないので、小屋や貯蔵庫の在庫を『鑑定』してみると、機能のようなモノはないけれど、精霊たちによる高濃度の魔力が含まれてるとか出た。
「こ、これは、私が食べても問題ないのよね?」
特に稲荷さんから注意されたわけでもないし、大丈夫なはず。
そう自分を納得させると、今度は、敷地の周りに置いたガーデンライトについて『鑑定』してみた。
「うそーん」
思わず声が上がった私。
何が驚いたって、『光の精霊の加護』が付いてるのだ! 『光の精霊の加護』は魔を払う加護らしく、悪い物は近寄って来ないらしい。でも、柵の中(結界の中)にあるから、その外までは範囲になってないっぽい。
もしかしたら、道沿いに置いてあるガーデンライトがある辺りは、魔物が近寄れないのかも?
「え、じゃ、じゃあ、後は車!」
……残念ながら、これはただの軽自動車でしかなかった。
これにも『光の精霊の加護』がついてたら、魔物を気にせずに山を下りられるんじゃ、と思ったのに。
「何が違うのよぉ」
思わず、疑問を零す私なのであった。
* * * * *
精霊たちは、クスクス笑いながら、五月の周りを飛び回る。
『だって、ライトには私たちの力を込めてるものね』
『あのデカい塊には、何もしてないものね』
『光の力を込められるものなんて、ないんじゃない?』
『ねぇねぇ、あの顔の目玉は?』
『そういえば、夜に光ってたかな』
『しょうがないなぁ、五月のために、加護をつけとく?』
『フフフ、後で気付いて、驚くかな』
『驚いたら面白そう!』
キャッキャと盛り上がる光の精霊たちをよそに、肩を落とした五月はログハウスに戻っていった。





