第911話 前進、前進(2)
イグノス様の苦労を察しつつ、私は私のできることをするしかない。
精霊王様とお茶をしている間に、土の精霊たちが集まってきたので、私もさくらんぼの苗木を植えることを再開することにした。
休憩していたホワイトウルフたちも再び、魔物狩りに向かう。その中にはちびっ子姿のマリンも含まれる。その姿で魔物狩り? と思うものの、マリンだしなぁ、とも思う。
私はタブレットを片手にさくらんぼの苗木を植えていく。
――あれ。光の玉が大きくなってる。
さくらんぼの苗木の周りを飛んでいる光の玉に目が行く。
そういえば、人型の精霊たちの声に重なって、小さく声が聞こえていたのを思い出す。彼らも少しずつ力が戻ってきているのかもしれない、と思うと、私のやる気もわいてくる。
トントントンと調子よく植えていく。
「五月~、ただいま~」
マリンの声にハッとした。周囲をキョロキョロすると、すっかり周囲が薄暗くなっていた。
すっかり集中していたのと、周りの精霊たちの光のせいもあって、日が傾き始めていたことに気付いていなかったようだ。
「お、おかえり~」
ちびっ子姿のマリンが、シンジュの背中に乗って戻ってきた。
そして、後ろをついてきているホワイトウルフたちは、ご機嫌で魔物をズルズルと引きずってきている。
先程のデビルズグリズリーの亜種ほどではないけれど、そこそこ大きな魔物たち。
私はありがたく受け取り、タブレットの『廃棄』でKPへと変換する。
「じゃあ、皆には、これをあげようかな」
この辺りには、ホワイトウルフたちが食べられそうな魔物がいないということだったので、代わりにと『収納』にしまい込んだままのワイルドボアやビッグフォーンデアなど、エイデンたちに貢がれて消費しきれていない魔物をドンドンドンと置いていく。
『わーい!』
『やったー』
『私、これー!』
「ここで作業するから、持って行ってね」
『はーい!』
ウノハナたちが魔物をくわえて、離れていく。大きな姿であっても、皆、尻尾をフリフリしている姿は可愛い。
――さて、軽く『伐採』してログハウスが置ける広さにしないと。
さくらんぼの苗木を植える場所の周辺だけしか『伐採』していなかったので、もう少し広げないとログハウスを出すこともできないのだ。
それにしてもこの辺りの木々は、魔物同様に魔素の影響を受けているようで、黒々としている。タブレットの『収納』の中で確認すると、選択肢には『廃棄』しか出てこなかった。
薪にも使えないのか、と思うと、非常にもったいないと思ってしまう。貧乏性である。
なんとかログハウスを設置する頃には、すっかり日は落ちている。
できるなら、ガーデンフェンスくらい設置したかったけれど、ホワイトウルフたちもいるので、警備は彼らに任せることにした。
「マリン、中に入るよ」
「はーい」
「精霊王様は?」
『私はもう少しウロウロしてくるよ』
「わかりましたー」
ふわりと上空に上がっていく風の精霊王を見送る。
――おお、ここも星空が綺麗だな。
周囲は黒々とした木々に囲まれているけれど、夜空はキラキラと星が瞬いている。あちらでも、山の上に行けば見られるかもしれないが、それよりも星の数が多い気がする。
「五月、早く~」
「あ、はいはい」
私はマリンと一緒にログハウスのドアを開けた。





