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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
初春から村は大忙し

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第908話 熊の魔物と『廃棄』のKP

 タブレットの『収納』にしまっていた、さくらんぼの苗木を順々に植えていく。後ろの方では精霊たちの賑やかな歌声が聞こえてくる。

 さすがに すべての苗木に張り付くほどの数はいないようで、今いる私のところには土の精霊たちはいない。だから、ニョキニョキと苗木は育たない。


 ――いやいや、これが普通だから。


 内心、一人でツッコミしつつ、私はユグドラシルの方へと進んでいく。


『お、戻ってきたようだぞ』


 風の精霊王様の言葉に、タブレットから顔を上げる。


『五月~!』


 ウノハナの声にそちらを向くと。


「げっ、な、何、あれ」


 ウノハナよりも三倍はありそうな大きな黒い物体を、たくさんのホワイトウルフたちが土埃をあげながら引きずってきている。

 ムクが木を切り倒しながら、道を作らないと持ってこられない大きさだ。

 皆、泥だらけになっている。


『大きいの狩ってきた!』

「いやいや、大きいのにも、限度ってもんが」


 ホワイトウルフたちがご機嫌で運んで来たのは、黒い剛毛を生やした四足歩行らしき魔物。体型や足の裏の感じから熊の魔物だろうか。判断がつかなかったのは、頭がなかったから。

 獣独特の臭いなのか、ちょっと鼻をつまみたくなる。


『ん? でも、エイデン様が狩ってくるのよりは小さいよ?』

「……比較対象がエイデンなのは違うと思う」


 それにしても、大きい。ホワイトウルフたちも、よく運んでこれたものだ。


『ほお、デビルズグリズリーの亜種か……まだ若いな』


 私の隣に立った風の精霊王様が感心したように言う。


 ――若くて、こんなにおおきいの?


 魔物の大きさに思わず慄く私。


『若いから、怖いもの知らずに出てきたんだろう。他の魔物は大人しくしているというのに』

「そ、そうなんですね」

『五月、早くしまって?』

「ん? でも、皆で食べなくていいの?」


 この子たちは、大概は自力で魔物を狩って食事をしている。なので、この魔物も大きいのを狩ったという報告のために持ってきたのかと思ったのだけれど。


『あー、これは、いいの』

『……胃もたれする』

「へ?」

『なるほど。もしや、魔素が濃すぎるのか』

『そー』

『……たぶん、人族は食べたらダメなヤツ』

『残して、他の魔物が食べたら、もっと強い魔物になっちゃうから、持ってきたの』

「なんつー、ヤバいの持って帰ってきたの」


 私にはさっぱり感じられないけれど、精霊たちが近寄ってこない感じからも、かなりヤバいんだろう。

 さっさとタブレットに『収納』して、『廃棄』を選択。


「うへっ。なんなの、このKP!?」


 デビルズグリズリーで得られたKPは200万を超えていたのだ。

 すでに確認もしなくなったKP。『廃棄』もたまにしか使わないけれど、せいぜい一桁か二桁がいいところ。そんな『廃棄』で、200万を超えるのを見たのは初めてかもしれない。


「これは、KPを使いまくれという、イグノス様の思し召し……」

『ん~、イグノス様は、そんな余裕はないと思うがな』

「え?」


 風の精霊王様が苦笑しながら、そう言った。


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