第900話 宿の食堂にて
私が宿の部屋でのんびりしている間に、エイデンたちは皆で冒険者ギルドに行ってしまった。
ただの報告だけだから、すぐに戻ってくるかな、と思ったのだけれど、戻ってきたのはガイシャさんとテオだけ。
テオがお腹を空かせているようだったので、私たちは三人で宿の食堂へ向かった。
さすが『疾風迅雷』が定宿にしているだけあって、料理もいけるのか、食堂もそこそこ混んでいた。
女将さんが私たちを見つけて、すぐに奥のほうの席に案内してくれた。
「ところでエイデンたちはどうしたの?」
「ギルマスと代官につかまってますよ。かなり大きな話になってしまったようで、領主様が出張ってくることになったらしいんです」
「へ?」
元々、アースドラゴンの話はこの街の代官には報告はしてあったらしい。そこから先、この街を含めた一帯を治めている領主まで話が届いたのがつい最近。
エイデンたちが戻ったのをギルドスタッフがすぐに代官のところに知らせたものだから、すぐに冒険者ギルドにやってきたらしい。
その場での報告で、犬獣人の村が精霊王様から制裁を受けたという話までになったものだから、大慌てで領主に連絡を入れたら、領主自らケセラノの街にやってくる話になったそうだ。
「……でも、報告は終わったんだから、エイデンたちは戻ってきてもいいんじゃないの?」
「それが、代官がなかなかしつこくて」
色々、話を聞き出そうとしているらしい。
長くなりそうだったので、ガイシャさんとテオだけ先に戻らせてもらったらしい。
「……よくエイデンが我慢してるね」
「私もそう思います」
ガイシャさんが厳しい顔で頷いている。その横でうんうんと頷いているテオ。思わず、クスッと笑ってしまう。
「その領主様って、この街に近いところにいらっしゃるの?」
「ここの領都はもう少し王都寄りにあって、馬車で二日ほどですかね」
「え、じゃあ、二日もここで足止め?」
「こんなとこに二日もいられるか」
突然、不機嫌そうな声が聞こえたかと思ったら、エイデンがテーブルの横に立っていた。
「お帰り」
私はそう言うと、隣の椅子を引いて、座るように促す。
エイデンは無言でムスッとした顔で椅子にどかりと座った。
「ネドリさんたちは?」
「置いてきた」
「えっ」
「俺よりもネドリのほうが話は上手い」
――確かに。
「それに、あの代官がしつこくてな」
「やっぱり」
ガイシャさんが苦笑いする。
そこに女将さんがやってきて、私たちのテーブルへと料理の載った皿を置いていく。まさに冒険者たちが喜びそうな塊肉が、ドドドンと載っている。ガイシャさんに注文をお任せしたらこうなった。
……半分も食べられる自信はない。
「旦那はどうする」
「同じのをくれ」
「あいよ」
女将さんが機嫌よくテーブルから離れていく。
「代官が何をそんなにしつこくしてるのよ」
「アースドラゴンの巣が本当にあったのかってな」
「あ、あー」
「今では火の精霊王のせいで、炭化したのしか残ってないから、証明のしようがないい。そもそも、まだ熱すぎて中に入れんだろう。その上、そんな奥地にあるのにどうしてこんなに早くに戻ってこれたんだ、とか、こんなに大騒ぎにしてとか、ネチネチとな」
「……よく我慢してたね」
「ヤツが話をしてたのがネドリだったからな」
エイデンは後ろに立ってただけらしい。
それにしたって、エイデンにしては偉い、と思ってたら、その間、ノワールと念話をして村の様子を聞いていたらしい。
エイデン……。
「いつまでも終わらんのでな。俺はさっさと抜けてきた」
……ネドリさん、お疲れ様、である。





