第897話 犬獣人の村の顛末と、ビャクヤ一族参上
ワイルドボアのステーキを豪快に食べていくエイデンたち。私はそれを見ているだけで、十分お腹いっぱいだ。
食事をしながらだったけれど、当代の村長の記憶をエイデンが覗き込んだ(さすが古龍)のを、ポツポツと話をしてくれた。
元々、この森の中にあった犬獣人の村はギリギリの生活をしていたらしい。それこそ、自分の子供を奴隷商人に売らなければならないほどに。
そんな村にある日、年老いたエルフがやってきたそうだ。
彼が先代の村長に教えた、いくつかの魔法陣のおかげで、魔物も近寄らなくなり、畑の作物も安定して実るようになった。
残念ながら、それは彼らの村の範囲だけのこと。もっと収穫を増やそうと、少し離れたところを開拓しても、その場所では植物は育たなかったそう。
先代の村長は、その魔法陣は周囲の精霊たちの力を奪う物だと聞いていた。なので、当代に引き継ぐ時には、やりすぎないようにと告げていたようなのだが、もっと暮らしやすくなると思った当代は、先代の言いつけを守らなかった。
新たに開拓した土地の中心にも、同じ魔法陣を描いて、どんどん村を大きくしようとしたのだ。
しかし、実際には、ただ村を繁栄させるための魔法陣なだけではなかった。
「あれは、別のどこかに精霊の力を送る文字も書かれていた」
ギラリとした目で、分厚い肉を噛み切るエイデン。
「精霊王様方は、すぐにそれに気付いたようで、魔法陣ごと村を吹き飛ばされました」
ネドリは目を伏せながら話す。
それは……村が壊滅状態ということを意味するのだろうか。
――彼らが精霊たちの力を奪って、享受してきた報いではあるのだろうけれど。
「アレが、どこに繋がっているのか調べねばならないこともあって、精霊王たちは老エルフを探しにいったのだ」
精霊王様でも気付けないなんて、老エルフというのは、いったい何者なのだろうか。
私は渋い顔で食後のお茶を飲みながら考え込む。
その隣に座るのは風の精霊王。こちらも無言で野営地の外の方を見ている。
「何か気になることでも?」
私が声をかけると、フッと笑みを浮かべる精霊王様。
『なに、そろそろ、村から追いかけてくる者たちが着くかと思ってな』
「え?」
その言葉と同時に、なんとビャクヤたちが野営地に飛び込んできたのだ。
『五月様!』
『五月~』
『お手伝いきたよ~』
『きたー』
「やだー! 凄い嬉しいんだけどー!」
モフモフ成分が皆無だったので(さすがにネドリさんやガズゥでモフモフするわけにもいかない)、ビャクヤたちの登場は、涙が出るくらい嬉しい。
私は椅子から立ち上がり、ビャクヤに抱きつく。
そんな私に周りをウノハナ、ムク、シンジュがグルグルと歩き回る。
『精霊王様たちから、何やら、五月様たちがご苦労されていると聞き、すぐに動ける者たち総動員で参りました』
ビャクヤの言葉にハッとして周りをみると、野営地の中は白いモフモフだらけ。入りきらなかった子もいたようで、野営地の周りにも十数頭のホワイトウルフたちがいた。
「うわー、なんか、ごめん」
『五月様が私どもに謝る必要はございません。我々は、お求めいただければ、どこからでもお傍に参りますので!』
「わーん、ビャクヤー!」
『五月、私もいるのよ』
『僕だって』
『私もー』
モフモフに囲まれて、重い空気が一気に飛んでいった気がした私であった。





