第895話 風の精霊王様からの依頼
薄ぼんやりしていた光の玉たちが、徐々に明るさが増してきている。
増してきているのはいいのだが。
「ま、眩しいんだけど」
サングラスがタブレットの『収納』に入っていただろうか。
そんなことを考えるくらい、短時間で明るく光るようになって、私も困惑している。
その一因としては、風の精霊王様だけではなく、火の精霊王様までが、この野営地にやってきたからだと思う。
私たちは折り畳みテーブルでお茶をしながら、周囲を見ている。
『だいぶ、元気になってきたようだの』
『うむ』
精霊王様たちは属性が異なっていても、力を分け与えることができるらしい。一番は同じ属性なのだけれど、今は緊急事態だということだ。
それでここまで明るくなるのは、それはそれで困るんだけど。(遠い目)
爆発が起こったところには土と水の精霊王様が残っているらしく、火の精霊王様はこちらの様子を見にきてくれたそうだ。
『この地には火の者はおらんかと思ったが……あちらのほうにおるようだの』
火の精霊王様が向いている方向は、爆発音のあった方角から少し北側に寄ったところ。
『ふーむ、エイデンたちがおるようだな』
「え?」
『村のことは水と土のに任せたのであろう……ふむ、私も少し行ってくるか』
厳しい顔でそのままスーッと上空にあがるとピューンと飛んで行ってしまった。
『サツキ』
「え、あ、はいっ」
風の精霊王様に呼ばれて慌てて返事をする。
『だいぶ息を吹き返した者も増えてきた。形が定まった者はできるだけ、この地から出してやりたいが、まだ、不安要素がある』
「そうなのですか?」
『うむ。だからな、もう少しサツキの土地を増やしてもらえぬか』
すでに紅葉を野営地の周りを三周分くらいに植えてはいるのだけど、もっと必要ということか。
KPの残高には余裕があるから気にすることはないのだけれど、どういう形で広げるのがいいのだろうか。
私はタブレットで『地図』を開いてみる。
野営地は見事に森の奥地にあるのがわかる。南のほうにある狸獣人の村からもかなり離れている。一番の最寄りが、あの爆発した村なのが嫌な感じ。
「やっぱり南の方角に伸ばすのがいいのかなぁ」
『ふむ……それよりも北西のほうがよかろう』
「? なんでです?」
『この方向の先には、かつてエイデンが眠っていた山、そしてユグドラシルの母となる木が植わっているのだ』
初耳である。
『まぁ、かなり距離はあるが、ユグドラシルと繋がれば、精霊たちももっと育つに違いない』
人型の精霊にまで育つということだろうか。
私がここに住みつくわけにもいかないと思えば、彼らを育ててくれる存在と繋がっていられたほうがいいとは思う。
「でも、強い魔物がいっぱいいるって」
『フッ、なんのための精霊王であるか』
「え」
ニヤリと悪そうな顔で笑う風の精霊王様。その周りを飛んでる風の精霊たちも真似している。
――これはやらない、という選択肢はないんだろうなぁ。
私は、あははは、と空笑いしながら、タブレットを手に立ち上がった。





