表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導師学校物語  作者: 夢坂姫乃
3/4

Episode.3

「さてと、花陽(はなび)が無事に1年生に新しいメンバーとして入ったということで…まずは自己紹介から始めようか!」


「ねぇねぇりっきー先生、何でボク達外に出たの〜?」


律樹(りつき)が自己紹介を始めようとすると、お団子とツインテールが合わさった特徴的な髪型の少女が首を傾げた。律樹曰く、花陽に実際に自分達が使える魔法を見てもらい、魔法を身近に感じてもらうことが目的らしい。あぁ〜、と納得した様子を見せた少女は、花陽の前に立つと再び人懐っこい笑みを浮かべた。


「じゃあボクから!ボク、信楽(しがらき)夕楽(ゆうら)って言いまーす!専用魔法は《操鎖術》っていう、鎖を出せる魔法ですっ。よろしくね〜!あ、あと月乃(つきの)お姉ちゃんの双子の弟ですっ♪」


手を挙げたり、その場でくるっとターンをキメたりし、元気よく自己紹介した夕楽と名乗った少女…ではなく少年は、ウインクをしながら小首を傾げた。


「よ、よろしくお願いしま…え、弟ってことは、男の子…なんですか…!?」


「うん!変…かな…?」


夕楽は握手をしながら、苦笑した。そんな夕楽を見て、花陽は首を横に振った。むしろ、男の子なのにそんなに可愛いのは羨ましいし、自分の好きな格好をするのが1番だと思う。そう言うと、夕楽は少し驚いたような顔をしたが、それはすぐに崩れて満面の笑みを見せた。


「えへへ…ありがとう、花陽っ!ほら、お姉ちゃんも自己紹介しなきゃ!」


夕楽はお姉ちゃん、と呼んだ銀髪の少女の腕を引く。肩に付かない程度の編み込みハーフアップ姿であり、淑やかな雰囲気を醸し出す彼女は、ふわりと笑みを浮かべた。


「初めまして、花陽ちゃん。さっき夕楽から少しだけ紹介があった、姉の信楽月乃といいます。専用魔法は《音楽操作》っていう、ピアノとかを演奏して攻撃したりできる魔法です。弟共々よろしくお願いします〜」


「よろしくお願いします…!あ…えと、私は人間界、から来た桜羽(さくらば)花陽です…えと、専用魔法…は…これ、言っても大丈夫なんですか…?」


花陽は困ったように律樹に聞くと、その包帯を着けてる間は無力だから安全だよーとだけ返された。じゃあ大丈夫なのかな…と、半ば心配しながら再び口を開いた。


「な、成り行きというか…自分のせいというか…う、うーん、自分のせいっていうのがほとんどなんですけど…えっと…専用魔法は、《蛇の刻印》、です…」


「えっ、《蛇の刻印》って…あの禁忌魔術の!?」


夕楽が驚いたような声を出すと、花陽は再び困ったような顔をした。これで怖がらせて、避けられたらどうしよう…頭の中でそんな考えがグルグル回っていると、律樹が花陽の肩に手を置いた。


「禁忌魔術とは言えど、制御面が未完全なんだ。花陽には無効化魔法の効果を付けた包帯も着けてるし、基本外さなければ何ともないから。あ、近日中に付け外ししやすいように眼帯あげるからね。」


「あ、ありがとうございます…!」


「そう、未完全な禁忌魔術…体とかは大丈夫なの?何か前と違うところとか…」


月乃は心配そうな目で花陽に聞く。怖がってる雰囲気ではない…?と感じた花陽は、片目の中にずっと何かが流れてる感覚、とだけ伝えた。花陽にとっては、ずっと片目だけ水の中にいるような…そんな感覚なのだ。しんどくはないため律樹には言わなかったが、この際聞いておこう、と考えた。


「あの…宮歐先生…その、この片目だけ何か…こう…水が流れてるみたいな感覚…なんなんですか…?」


「あぁ、多分魔力っていう魔法を使うための力がずっと右目に集中してるんじゃないかな。感覚が掴めれば、魔力を全身に満遍なく流すことができて、その感覚も無くなるはずだ。」


「つまり…花陽ちゃんは、今は右目だけ魔術師で他の体は普通の人間、ってことですか?」


月乃が問うと、律樹はその通り、と答えた。でも、と律樹は優しい笑みを浮かべた。


「花陽は魔術師じゃない。魔導師学校1年生の、俺達のメンバーの1人。魔導師なんだ。そこは気を付けてね。」


「…あ…そっか…ごめんなさい、花陽ちゃん。」


「い、いえ…!私も、まだ魔術師と魔導師の違いとか…分かんないので…気にしてないですよ…!」


申し訳なさそうな目をした月乃に、花陽は必死に首を横に振った。詫びられると焦ってしまう悪癖があり、直さないとなぁ…と溜息を吐いていると、そんな様子を見て律樹はこんな提案を出した。


「それじゃあ自己紹介もしたし、今度は信楽姉弟の魔法でも見てもらおうか。さっきも言ったが、実際に見た方が魔法っていう存在を実感できると思うんだ。」


「魔法…私の、《蛇の刻印》…みたいなものですか…?」


「そうそう。さっき2人が言っていたような《操鎖術》や《音楽操作》を見てもらおうと思うんだが、2人は大丈夫かい?」


律樹が紫色の液体が入った丸型のフラスコを2つ白衣の中から取り出すと、月乃と夕楽は律樹のやりたいことが分かったのか頷いた。花陽が首を傾げていると、律樹はフラスコを少し遠くに投げた。割れたフラスコから出てきた液体が徐々に魔法陣へと形成されていく。すると、魔法陣から現れたのは――


「ぞ、ぞ、ゾンビ…!?」


むき出した白目、真っ青な体に纏っているのは汚れてボロボロな服、腕をだらんと伸ばした姿。それは、ゾンビ以外の何者でもなかった。空想の世界でしか見たことの無いゾンビに震えていると、律樹は花陽の目の前に()()()と同じ薄いオレンジ色の結界を張った。


「あれが魔導師結界内に蔓延る魔獣の1種、ヴロミコ・ゾンビ。下級魔獣だから、そんな怖がらなくて大丈夫大丈夫〜」


「こ、怖がるのが普通、だと思いますけど…ひぃっ!?」


花陽は魔獣が目の前にいるというのに全く物怖じしない律樹に困惑した。すると、魔獣…ヴロミコ・ゾンビが伸ばしていた両腕を振り下ろし、律樹が張った結界をパリンッと割ってしまい、花陽は思わず悲鳴をあげながら左目に巻かれた包帯を外そうとした。


「そんなことしなくてもだいじょーぶ!」


だが、その言葉と共に花陽は腕を引かれ包帯を取ることはなかった。花陽の腕を引いた夕楽は、足元の赤紫色の魔法陣から2本の金色の鎖を出現させ、ヴロミコ・ゾンビを拘束した。ヴロミコ・ゾンビがヴヴヴと呻いていると、花陽の後ろから心地よいピアノの音色が響きだした。月乃は薄い水色の鍵盤に指を滑らすと、青い光を放つ林檎ほどの大きさの弾が飛んでいき、ヴロミコ・ゾンビを攻撃した。


「お姉ちゃん、花陽のことよろしくー!」


「は〜い。」


花陽を月乃の元へ行くように促すと、夕楽は足元に光る赤紫色の魔法陣から出現させた1本の鎖鎌を両手に、ヴロミコ・ゾンビへ跳んでいった。


「これでっ…おしまい!!」


鎖鎌がヴロミコ・ゾンビの首を撥ねると、ヴロミコ・ゾンビは黒い煙と共に姿を消した。


「…と、いうわけで!これがボク達の魔法!」


鎖鎌がワイン色の光と共に消えると、夕楽は花陽の方へ振り向き、明るい笑顔を見せた。だが、その笑顔も束の間、呆れた顔で律樹を見た。


「…と言いたいんだけど…りっきー先生、いきなり魔獣出したら怖がられちゃうでしょ!」


「大丈夫大丈夫、戦闘練習用の本物(リアル)に限りなく近い偽物(コピー)だから。」


「それ、ボク達と初めて会った時くらいにも言ってたよね…?」


律樹がケラケラと笑いながら夕楽と話していると、花陽は月乃の後ろから顔を出した。


「…あれが…魔獣…」


「そう。魔導師が倒さないといけない悪。魔獣に親族を殺された人だって、たくさんいる。だから私達魔導師は、魔獣の絶滅を目指しているの。」


「あと敵対心が強い魔獣は、子供とか魔力が少ない子には危険だから倒す、って感じかな?」


月乃と夕楽がそう説明すると、花陽はなるほど…と小さく相槌を打った。後ろで見てた律樹は、3人の関係が良好なことに満足気な表情を浮かべると、真面目な顔で話に入った。


「魔獣についての関心がついて結構。だが今日は、来たばかりの花陽のためにも魔導師について、この世界についての話をしようか。月乃と夕楽は、復習と思って聞いてもらいたいな。」


「はーい!」


夕楽が元気な声と共に手を挙げる。笑みを浮かべた律樹が指を鳴らすと、紺色の光の粒と共にホワイトボードが出現した。黒いペンで「魔導師・魔術師」と書くと、花陽達の方を向いた。


「さて、椅子なりシートなり出して座ってくれ。この世界についての特別野外授業を始ようか。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ