レベリオー 3編
前とは違い早めの投稿。今回も楽しんでくれたら何よりです。
第1章 5話「記憶」
前話よりも時が経ち、3日後。着々と文字が読めるようになって来たカル。今回は野外でいつもの5人で騒いでいた。
「これは進行形で…えー、襲われ続けているので…助けて下さい…と。」
アルス「そうです。冒険者の依頼文の例です。だんだん読めるようになってきましたね。」
「ああ、段々楽しくなってきた。できるってのは良いね。」
(前世界とは違って読めなきゃ生きていけないからな。)
ラウラ「でも、最初はあんなにやる気無かったのに、どういう風の吹き回し?」
石に腰をかけ、手に顎を乗せながら不思議にそうにしているラウラ。
アール「そりゃあ決まってんだろ?騎士になる為だよな!カル!!」
声を張り上げるアール。
ヘウル「アール君…前に騎士は文字読めなくても良いって、言ってなかったっけ…」
苦笑いをするヘウル。
「騎士じゃあ無いさ…俺は魔法を使いたいんだ!」
アルス「あ…」
声を上げたカルだが何やら周りの様子がおかしい。
(ん?…何やら周りの様子がおかしい…何や?使えないとか?やだ〜それだけはやめて欲し〜。これからの俺の異世界紀行どーすればええのぉ。)
4人「………」
気まずそうな顔をして、黙りこくる4人。
(え?マジたんなやつ?…にしてもこんな空気になるか?)
ラウラ「そ、そうね!できると良いわね…」
アルス「え、ええ…」
「お、おう…」
(あからさまな動揺だなぁ…何にかあるのか?予想がつかん…)
しばらくして、まだ5人はいつものように別れを告げ、互いの帰路に向かうが、カル以外のほか4人は、走り出す。そんな4人を不思議に思いながら、カルは自らの帰路を進む。
(う〜ん…まだ確かではないが、魔法が使え無いとなると、どうするか〜…もう学園という選択肢は無いな、騎士学校とか言って野郎とホモりたくねぇし、これBL創作する気は無い…剣士枠として冒険者になるしか無いなぁ…)
いつも通りその後自分に関して妄想に耽ていると自分の家が見えて来るが、何やら人だかりが。
「ん?アイツらは…」
いつも遊んでいる4人が家の前で母親と話している所が見えてくる。
(普段こんな事は無いとは思うが…もしかしたら、昼間のあの反応に関係有るかも)
そう思い、少し離れた物陰に隠れ、聞き耳を澄ます。
アルス「カ…く…、…………し……………な……聞い………です…。今…………………たら、シ………で記憶が………、ま…………………なっ………と………たら…」
(クソッ、全然聞こえん、何喋ってやがる…もっとハキハキ喋れアルス!記憶が何だって?!)
もう少し、粘ろうと思ったが、帰りが遅い分怪しまれるだろうと考えたカルはもう正々堂々と歩いていく、と決めた。
「よー、どうしたんだ、皆んな総出で?なんか用か?」
5人「?!」
いきなり現れたカルに対して驚きを隠せない母含め5人。そして尚、母親だけはいつもの穏やかさには程遠く困り果てた顔をしていた。
カル「何ちゅう顔しとんねん…お母さん」
母リア「……」
母リアは沈黙していたが、ようやく決心した様子で
下げていた顔を上げ、目を見開きこちらを見た。
カル「なんか悩みあるなr…」
母リア「カル。」
母親はカルの言葉を遮り、名前を呼ぶ。
母リア「…話したい事があるの。聞いてくれる…?」
カル「もちのろん。」
母リア「ありがと…。」
母は表情を穏やかにして他の4人に顔を向けた。
母リア「皆んな…ありがとうね…心配してくれて…。」
アルス「…言うんですか?」
アルスは複雑そうな顔をして問う。
母リア「うん…。このまま隠していても…仕方ないから…」
母リアは少し悲しげな顔をした。
アール「みんな行こうぜ…これ以上は野暮だ…。」
ヘウル「う、うん」
ラウラ「…」
アールの言葉に従い皆、カルの家を後にした。
母リア(…母親として、責任を取らなきゃ…)
私はそう決心した。
第1章 6話「回想」
まだ彼がもっと幼かった頃の話。彼は小さい頃から、ずっと大人びていた。
「カール。そんなに本ばかり読んでないで、お外でお友達と遊んできたら?」
幼きカル「……」
「全く…もう」
彼はあまり言葉を発しない。必要な時だけしか喋らない。私はこれも一つの個性なのだと許していた。
そんなある日の事、イナース王国のお祭りが城下町で行われる日のことだった。
「カールー?お祭りにお姉ちゃんと行くけど、カルも行くー?お姉ちゃんも一緒に行きたいってー!魔法のパレードがあるらしいわよー?」
姉アイア「お母さん。カルは絶対に行かないわ。」
私もアイアちゃんと同じようにあまり期待はしていなかった。だけど、何も言わずに出て行くのは悪いと思ったので、声をかけておこうと思った矢先の事だった。
幼きカル「お母さん…魔法のパレードがあるの?」
いつも部屋でお手伝い以外は本ばかり読んでこもっているカルが自分の意思で、出てきたのだ。
「え、ええ…魔法のパレード…やるそうよ。」
幼きカル「僕、行きたい…お祭り…」
心底驚いた。彼が自分の意思で動いた事に。私の心は半分舞いあがり、半分心配だった。
そして、お祭りの城下町に着き、様々な屋台が置かれている中、彼は一人そんな物には興味が無いといった風貌で、ただ前に、歩き進む。
「ちょっと、、カ、ル!どこへ行くの?何か食べないの?」
人混みで突っ返そうになりながらも、彼の後を追う。
そうして、追いついた頃にはそこでは、魔法のパレードが行われていた。
「カル…これが見たかったの?」
そこには綺麗な女性たちが数多の魔法行使して、幻想的で色鮮やかな光景が広がる。
幼きカル「…………!」
彼は黙っていた。けど、それはいつもの沈黙とは違う。目は輝いて、只々、そんな光景に熱中していた。
私は嬉しかった。こんなカルは見た事がなかったから。
それからと言うもの彼は生き生きとしていて、魔法の事でよく会話をしてくれた。会話する事も増えてきて私も彼と同様に幸せだった。
だけどその幸せは唐突に崩れた。
カル「母さん、魔法はやっぱり面白いよ。僕に生きる理由を見出してくれたんだ。だから…」
魔法使いのお伽話を読みながら、淡々と喋るカル。
そんなカルを見て、私は言った。
「カルは魔法使いになりたいの?」
幼きカル「うん!僕は絶対になるんだ。魔法使い。そして魔法の研究もしたい。」
「何言ってるの、カルは男の子なんだから魔法は使えないじゃない。」
幼きカル「え…」
杞憂だった。悪気はなかった。いつかは喋ろうとしてた事がつい口走ってしまった。こんなタイミングで…
幼きカル「…そんなの嘘だ…そんな冗談、母さんでも許さない。」
「カ、カル…落ち着いて…」
幼きカル「嘘…嘘だよね…母さん、そんな…そんなのって無いよ…」
そこから彼は変わってしまった。前以上に部屋に引き篭もるようになってしまった。魔法という生き甲斐を失くして。
「カル…ご飯ここに置いておくから…」
カルは返事をしない。部屋を開けても、まるで人形のようにベッドに横たわっていた。そんな彼を見たくなくて、そっとするべきと自分に言い聞かせていた。母親失格と自分を罵りながら。
だけど、姉であるアイアちゃんはカルを見て見ぬふりなどしなかった。カルを立ち直させようと、頻繁に話しかけ、家の手伝いをさせ、森を散歩させ、自分に出来ることをしていた。そんな姿を見せられて、心底自分に腹が立った。私もアイアちゃんのように前向きになろと。自分の子供に教わるなんてほんとに情けない…。
何年か経ち、カルが家の手伝いはするようになった頃、彼に異変が起きた。アイアちゃんにカルに手伝うように伝言を頼んだ時だった。いつものように生気の無いような姿を見ようととした時だった。
???「えーと、おかあーさーん?」
背後からいつしか聞いた懐かしい声、その姿を見るや否や、一瞬誰かと思った。いつもの顔ではない、まるであの時の魔法で心輝いていた時のカルような姿、形、顔をしていた。
「え………。あ、こ、これ、家に運んでくれない?」
動揺を隠せないまま、カルに荷物を持たせて後、何か夢でも見ている気分になる。
「どうしたのかしら…カル…」
そこからと言うもの色々とこんがらがってあまり覚えていないが、本人が言うに記憶が無いとのこと。最初こそ心配だったが、記憶を無くしても、家族で談笑しながら食事をとったり、彼が楽しそうに村の子供達と遊んでいる所を見ると、このままで良いのではないかと思い、魔術医は呼ばなかった。
そうして時が経ち、村の子供達に恐れていた事を告げられる。
アルス「カルくんが、魔法に関して興味を持ちながら聞いてきたんです…。今事実を話してしまったら、ショックで記憶が蘇り、また以前のようになってしまうと考えたら…」
私は迷った。以前のカルのようになって欲しくないと。これをエゴだと感じながら。私が彼の人生を左右して良いのかと。この時だった。
カル「ん?よぉ〜、どうしたんだ、皆んな総出で?なんか用か?」
不意に驚いたが、カルの顔を見て、私は迷うのを辞めた。現実逃避はしてはいけない。いつかは知る時が来る。なら、隠さずに彼が変わっても彼を受け止めようと。
母リア「カル…話したい事があるの。聞いてくれる…?」
そうして、リアは決意する
次回に続く
どうでしたか?少し強引かな〜と思ったのですが、まぁいいか、許してね(*´꒳`*) 感想やご意見お待ちしております。