第9話 見えぬ道筋
領主の館
「まあ」
「なんてことだ・・・」
ナカサ領主は目をぱちくりさせ、
イサヤ領主は頭を抱える。
ヤオは野菜転生の話を両領主に説明していた。
さすがに装備化転生の話は誤魔化せないからだ。
「今まで黙っていてすいません。信じてもらえるとは思えなくて」
「異世界野菜転生・・・にわかには信じられん、が」
イサヤ領主は告げる。
「まずはこの本だ」
2冊の本を開こうとする、が、接着剤でもくっついてるかのように開かない。
領主は鑑定スキルを使う。
『異世界野菜転生辞典。所有者はヤオでロックされています』
装備化転生の本も同じくロックされている。
「所有者でないと見れない仕組みだ」
イサヤ領主は首を振る。
「それは、まあいい。ヤオでなくても野菜自体は小作人が作れるからな」
「問題はこれですわね」
ナカサ領主がしなびた野菜をつまみあげる。
2週間ほど経過した装備化野菜だ。
「2週間しか使えない装備なんてどうすればいいんじゃぁぁあ!」
反対にナカサ領主は冷静に、
「使い捨ての消耗品として使うしかありませんわね」
そこでヤオが反論する。
「使い捨てだなんて!うまく調理すればギリギリ食べられます!」
「そういう問題じゃないんだ!」
イサヤ領主がわめく。
ナカサ領主は努めて冷静に、
「ハクサイアーマーは、まあ羞恥心を捨てれる人が使用すればいいとして」
ヤオをちらりと見る。
「え?俺?」
そのまま続ける。
「ダイコンソードは凄いですね、ランドタートルをサックリ真っ二つに出来る切れ味は凄いですよ」
「そうなんだが・・・なんで君はそんなに冷静なんだ?」
ナカサ領主は遠い目をして、
「野菜で怪我を治してもらった時、少し悟りましたの・・・あと冒険者の間では有名な話ですので」
「そうか・・・」
「それで今後どうしますの?」
「そうだなあ・・・私の領地にはあまりダンジョンは無いから冒険者に売るという選択肢が無い。税さえ納めてくれればナカサ領主に卸してもいい。ただし普通の野菜を売るのに支障が出ない範囲で、だ」
ナカサ領主はにっこり微笑んで、
「それで充分ですわ。では価格等詳細は後日詰めるということで」
「ああ」
ヤオが手を上げる。
「ちょっといいですか?」
「何だね?」
「火薬って何かわかりますか?」
イサヤ領主は顎に手を当て、
「ここから東のドワーフの国で鉱山の採掘に使う薬品がたしかそんな名前だったな」
「それって手に入りますか?」
「火薬の製造法はドワーフの国の機密事項・・・だった」
「だった?」
「10年前まではな。今では製造法も漏れて我々の国も国の管理下でなら流通している」
「具体的にはどうやって入手を?」
「それは私が手引きしますわ。ダンジョン攻略に使うと国に申請しますの」
「いいんですか!?」
「私にもメリットのある事なのでしょう?それくらいは致しますわ」
「有り難うございます!」
ここまで読んでいただき有り難うございます。
評価とかしていただければやる気とか出ます。