第5話 領主
ヤオの店はたちまち街の評判になった。
そしてその評判は領主の耳にまで届き、
「異国の野菜を売ってる屋台がある?」
「はい」
使用人が恭しく頭を下げる。
「見たこともない野菜で驚くほど美味く栄養価もあるとか」
「なるほど・・・」
領主は顎をなでる。
「その店主と会ってみたい。会食の手はずを整えろ」
「はっ」
数日後
「領主様が俺に会いたいって?」
「はい。領主様があなたの野菜を見てみたいと」
「ふーむ」
ヤオは顎に手を当てる。
いづれこの時が来るかもとは思っていたが驚くほど対応が早い。
新しい領主はやり手という噂は本当だったか。
「で、返事のほうは?」
使用人が聞いてくる。
「会いましょう。しかし会食ではなく、私が私の野菜を調理してそれを食べながら話をするという形式を取りたいと伝えてもらえますか?」
「分かりました。必ずお伝えします」
数日後
「君がヤオか」
「お初にお目にかかります。野菜商のヤオと申します」
「私はイサヤ。この領地の領主だ。噂は聞いている。なんでも異国の野菜を売っているとか」
いきなり切り込んできたか。
油断ならない相手と判断し、ヤオは冷静に切り返す。
「ええ。異国の苗を多数仕入れまして。それを今少しづつ増やしているところです」
しれっと嘘をつく。
異世界野菜転生辞典の存在は伏せておいたほうがいい。ヤオの勘がそう告げていた。
「なるほど・・・」
ヤオは話題を変える。
「もう調理は済ませていますのでここで試食をしてみては如何でしょう?実際に食べてみればこの野菜の良さがわかると思います」
隣の部屋から料理が運ばれてくる。
「とりあえず今あるレシピはこれです。トマトサラダにトマトスープ、そしてシチューです」
「うむ。いい匂いだ。いただこうか」
イサヤ領主はトマトを口にする。
「実に瑞々しい!それに何だ、この体から力が湧き上がるような感じは!」
領主はシチューを口にする。
「美味い!この野菜のホクホク感がたまらん!シチューの汁が野菜にしみこんでなんとも言えん旨味が引き出されている!そしてこちらも体に力が漲る!」
ばっ、と領主はヤオを見る。
「どこの国からこの野菜を仕入れたのかね!?」
ヤオは頬を掻いて、
「それは言えません。こちらも商売ですから」
「そうか・・・」
イサヤ領主は考え込む。
しばらくして。
「ヤオ、取引をしよう」
「取引?」
「私はこの野菜をこの街の特産品にしたい」
「!」
「君にはとりあえず人手を3人貸そう。小作人二人、店員一人。君には経営をやってもらいたい」
俺は驚いた。願ってもない好条件だ。
が、聞くべきことは聞く。
「利益の配分は?」
「人件費そのたの経費を引いて出た利益の7割を君に渡そう。残りは税収としてこちらが貰う」
「わかりました。それで契約しましょう」
駆け引きの巧手ではなく取引に秀でた領主。
ヤオの内での評価はそんな感じだった。
こうしてヤオは経営のための時間と販路拡大の足掛かりを得たのだった。
ここまで読んでいただき有り難うございます。
評価とかしていただければやる気とか出ます。




