第34話 明日のために その①
「お前弱いな」
ヤオは素直な感想を述べる。
「ううう・・・この世界に来てまだ日が浅いんですよぅ」
俺は指摘する。
「それだ。『この世界』って何だ?」
蛍は姿勢を正し、
「あ、私この世界の住人じゃないんです。『地球の日本』って世界からやってきました」
「異世界人か・・・初めて見た」
ヤオは続ける。
「で、勇者ってのは何だ?芸名か?」
「芸名じゃありません!」
蛍は指を立てる。
「この世界に来た時にです。ここから少し離れた村に召喚されました。その村にですね、『引き抜いたら勇者になれる伝説の剣』ってのがあってですね、それを私が見事に引き抜いたわけです」
俺は顔をしかめる。
「引き抜いたら勇者になれる?胡散臭いな」
「胡散臭くありません!」
ヤオはため息をつき、
「でその伝説の剣ってーのがお前が持ってるパチモンか」
「パチモンって言わないでくださいよぅ」
蛍は涙目になる。
「まあ状況はわかった。達者で暮らせよ」
俺は背を向ける。
「ちょ、ちょっと待って!待ってください!」
「何だ?まだ何か用か?」
蛍は必死にしがみついてくる。
「私を!私を強くしてください!」
俺はそれをぶった切る。
「冒険者ギルドへ行け」
「行きました!行ったんです!でも『お前に任せられる仕事はない』って!」
「お前も大概ポンコツやな」
そこにハイドラが入ってくる。
「採取クエストとかあるでしょ?それは?」
「勇者はモンスターを倒してこそ勇者の華!そんな薬師みたいなことは出来ません、って言ってやりましたよ!」
俺は蛍から剣を奪い、
「この剣へし折っていいか?」
力を込める。
「やめて下さい!聖剣に何てことするんですか!」
ヤオは蛍の額に指を当て、
「お前な、採取の最中に襲ってくるモンスターをやり過ごすのもクエストの内なんだよ!そんなえり好みしてどうする!」
「はっ!採取のクエストだからてっきり薬草集めとかそんなのばかりかと!目から鱗が落ちました!」
俺はどっと疲れる。
ハイドラが蛍に言う。
「ヤマタイ国は中級の強さの魔物が多いから駆け出しの冒険者にはハードルが高い、って断られたと思うの。駆け出しなら同じヤマタイ国でも地域を選ばなきゃ駄目よ?」
「またまた目から鱗が!」
「大丈夫かお前」
ハイドラは続ける。
「それにあなたの持ってる剣、それ物理じゃなく魔力で切る剣よ」
蛍はきょとんとして、
「魔力?魔力って何ですか?ファンタジー的な何かですか?」
俺は頭を抱える。ハイドラは説明する。
「魔力は魔法を使うための素養よ。あなた潜在的にかなり素養があるわ。どう?私の訓練を受けてみる?」
「おい、ハイドラ。こんな奴の面倒見るのか?」
蛍はぱあっ、と顔を輝かせ、
「受けます!受けさせてください!」
こうして自称勇者の訓練は始まった。
ここまで読んでいただき有り難うございます。
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